左肢部静脈内の血栓及び左頸部リンパ節腫脹による症状の治療のためリンパ節摘出手術を受けた患者が,手術ミスにより副神経が切断され後遺障害を負った事例
左肢部静脈内の血栓及び左頸部リンパ節腫脹による症状の治療のためリンパ節摘出手術を受けた患者が,手術ミスにより副神経が切断され後遺障害を負った事例
前橋地裁 平成26年12月26日判決
事件番号 平成22年(ワ)第970号
本件は,左肢部の静脈内の血栓及び左頸部のリンパ節の腫脹による発熱等の症状を治療するため本件病院に入院し,リンパ節を摘出する手術を受けた患者が,この手術の過程で左頸部リンパ節付近を走行する副神経が手術ミスにより切断され,副神経麻痺の後遺障害を負ったとして,本件病院を運営する被告に対し,本件病院に勤務する上記手術の担当医らに副神経を損傷しないよう慎重に手術の操作を行う注意義務違反及び副神経を損傷した場合に直ちに同神経の縫合手術に備えるための必要な措置を講ずる注意義務違反に基づく不法行為があったと主張して,使用者としての責任に基づく損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,本件副神経損傷は本件手術によるものであるところ,本件手術の内容,難易度,切断という結果を総合考慮すると,本件医師らに手術手技上の過失があったといわざるを得ず,本件事故の発生がやむを得ないという事情も認められないから,本件医師らには,副神経を損傷しないよう慎重に操作を行う注意義務に対する違反があったというべきであり,また,本件事故は,本件予防義務に違反して生じたものであるから,本件医師らの同義務に違反する行為と,本件副神経損傷という結果との間には,因果関係があったと認定して,原告の請求を一部認容した。