開頭術による無症候性未破裂脳動脈瘤のクリッピング手術を受け,その後左半身麻痺等の障害が生じた事例
開頭術による無症候性未破裂脳動脈瘤のクリッピング手術を受け,その後左半身麻痺等の障害が生じた事例
東京地裁 平成26年3月27日判決
事件番号 平成23年(ワ)第19037号
本件は,被告病院において,同病院の勤務医であった被告医師の執刀で,開頭術による無症候性未破裂脳動脈瘤のクリッピング手術を受け,その後左半身麻痺等の障害が生じたことについて,被告医師に注意義務違反があったとして,原告ら(患者とその夫)が,被告らに対して,主位的には不法行為に基づき,予備的には債務不履行に基づき,損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,本件脳動脈瘤の客観的な形状からしても患者に本件手術の適応がなかったとはいえず,被告に適応上の義務違反を認めることはできず,被告医師に本件手術の手技について注意義務違反を認めることはできないとし,また,本件脳動脈瘤は破裂の危険性が高いものであったことからすれば,破裂の予防法としては必ずしも十分ではないが後遺障害が残る危険性の低い補強術やラッピング術にとどめるか,クリッピング手術を続けるかの判断は医師の合理的裁量に委ねられているものというべきであり,被告医師が本件手術を中止しなかったことについて同裁量を逸脱する注意義務違反があったということはできないとして,原告らの請求をいずれも棄却した。