前交通動脈の破裂脳動脈瘤に対するクリッピング手術中に再破裂をきたし,重篤な脳血管障害が発生,約一年後に死亡した事例
前交通動脈の破裂脳動脈瘤に対するクリッピング手術中に再破裂をきたし,重篤な脳血管障害が発生,約一年後に死亡した事例
さいたま地裁 平成26年1月30日判決
事件番号 平成22年(ワ)第3476号
本件は,被告病院において,前交通動脈の破裂脳動脈瘤に対する緊急手術としてクリッピング手術を受けた患者が,手術中に脳動脈瘤の再破裂をきたし,その結果血流障害による重篤な脳血管障害が発生し,本件手術から約一年後に多臓器不全によって死亡したことについて,亡患者の遺族である原告は,患者が死亡したのは,本件手術の執刀医である被告医師が動脈瘤の剥離操作にあたって予防的にクリップを置くなどして再出血防止に努めなかったことや,手術中の動脈瘤の破裂後に止血のための適切な手技を行わなかったことに起因するとして,被告病院及び被告医師に対し,不法行為による損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,亡患者の動脈瘤は例外的に一時クリップを使用すべき場合のいずれにもあたらず,具体的適応の面でも一時クリップを使用すべき注意義務を肯定することはできないとし,また,本件は出血が激しく,吸引を行ったがそれで対処することができなかったものであり,さらに,これに加えて脳が急速に腫れて術野が非常に狭くなり前交通動脈を確認してクリップを掛けることが困難な状態となったのであるから,一般論と異なる措置をとることも許容されるものであり,一般論に従った措置をとるべき具体的な注意義務があると認めることはできないとして,原告の請求をいずれも棄却した。