口蓋扁桃摘出手術を受けた直後出血し,窒息,心停止後,蘇生したが重度の脳障害が残った事例
広島地裁 平成23年2月23日判決
事件番号 平成20年(ワ)第1225号
本件は,扁桃肥大及び睡眠時無呼吸症候群のため被告病院において口蓋扁桃摘出術を受けた患者が,手術直後出血し,窒息,心停止後,蘇生したが重度の脳障害が残り現在も入院中であることについて,被告病院の医師には①nCPAP(経鼻持続陽圧呼吸)を先に選択せず口蓋扁桃摘出術を選択した誤り,②手術の危険性,nCPAPで治療可能であること,本件手術だけでは完治しないことの説明義務違反,③手術の手技上の過失,④抜管時に出血を招いた過失,止血処置に関する過失,蘇生措置に関する過失があるとして,患者及び家族らが被告に対し,医療契約不履行及び不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,被告病院医師には,意識下挿管ではなく全身麻酔による迅速導入を選択したことにつき過失があり,また,同過失と患者の低酸素脳症による遷延性意識障害,四肢麻痺発生との間に相当因果関係が認められるとして,不法行為(使用者責任)に基づき,患者に対し,逸失利益,慰謝料等相当額,患者の夫及び子らに対し,それぞれ近親者慰謝料を認容し,その余については棄却した。