出産のための帝王切開手術中及び術後に右上肢から点滴投与を受けていた薬剤が血管外へ漏出,右上肢カウザルギーの後遺障害が残存したとして損害賠償を求めた事例
東京地裁 平成29年3月23日判決
事件番号 平成26年(ワ)第11166号
本件は,原告が,被告病院において,出産のための帝王切開手術中及び術後に右上肢から薬剤の点滴投与を受けていたところ,被告病院の医師や看護師らには,①4日間にわたって薬剤の血管外への漏出を継続させた過失,②これに伴う障害として右上肢カウザルギーの発症を疑って検査をし,星状神経節ブロック注射等の適切な治療を実施すべきであったのにこれを怠った過失があり,これにより右上肢カウザルギーの後遺障害が残存したと主張して,被告に対し,不法行為(使用者責任)又は債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,被告病院の医師や看護師らには,薬剤の血管外漏出を継続させた過失があったとする原告の主張はその前提を欠き採用できないとし,また,被告病院の医師らについて,原告を診察等した際の所見,主訴,症状等に照らして,CRPS(複合性局所疼痛症候群)の診断治療を行うべき義務に反した過失を認めることはできないとして,原告の請求を棄却した。