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悪性所見が確認されていないのに乳がん(浸潤性)と診断され,乳房温存・リンパ節郭清手術を施行されたことについて,病院及び病理診断の委託先会社に損害賠償を求めた事例

京都地裁 平成30年10月24日判決

事件番号 平成24年(ワ)第2466号

 

 本件は,C病院(のちにDに商号変更,Dから事業譲渡を受けた被告Bが原告に対する債務を承継)において担当医師Eが原告から生検で採取した組織の病理診断を被告A(病理検査を目的とする有限会社,本件病理診断を実施。)に委託し,その結果(解釈に争いがある。)に基づき原告を乳がん(浸潤性)と診断して,乳房温存・リンパ節郭清手術を施行し,術中に採取した組織の病理診断も被告Aに委託し,被告Aは乳がん(非浸潤性)という診断結果を送付したが,その後,原告は,他の病院で上記各採取組織ないしその写真に基づく病理診断を受け,がんは認められないという診断を受けたことについて,本件生検組織の病理診断を担当した被告Aの病理医Fには,これを誤ってがんであると診断したことによる不法行為責任があるとして,被告Aに対し使用者行為(民法715条)に基づき,C病院の債務を承継した被告Bに対し,C病院(E医師)において原告にがんがあると誤診して上記手術をした債務不履行があり,また,被告Aは原告に対する病院の債務について履行補助者であるから,C病院を承継した被告Bは被告Aの過失についても責任を負うとして,債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案である。

 

 裁判所は,被告Aの病理医Fには,本件生検標本を良性と診断すべき義務があるとまではいえないが,がんでないものをがんと診断することは,患者に不要な治療による身体的侵襲や経済的・心理的負担等を与えることになるから,良性・悪性の確定的判断が困難であって良性と診断すべき義務が認められない場合に,悪性であるという確定診断をすることは,病理医の注意義務に反するとし,この注意義務違反と本件手術の間に相当因果関係が認められるとし,また,病理医Fの本件報告書は,がんがあるという病理診断と解すべきものであるから,C病院の担当医Eがこれをもって直ちに原告をがんと診断したことが同医師の注意義務違反とはいえないが,C病院は,履行補助者である被告A(その履行補助者である病理医F)の注意義務違反についても責任を負うものとした。

原告は,本件手術によって乳房を切除されるとともにリンパ節を郭清され,その後,放射線治療及びホルモン治療を受けたが,これらはいずれも原告の身体に対する侵襲であり,原告はこれによって,積極的・消極的損害を被ったと認められるとし,後遺障害逸失利益,慰謝料等相当額を認容し,これを,被告Aに対しては不法行為に基づく損害賠償として,被告Bに対しては債務不履行に基づく損害賠償として,連帯しての支払いを命じ,その余の請求を棄却した。

 



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