羊水検査結果の誤報告により,中絶の機会を奪われダウン症児を出産,出生後短期間のうちに死亡した事例
医師の羊水検査結果の誤報告により,中絶の機会を奪われてダウン症児を出産し,同児は出生後短期間のうちに死亡した事例
函館地裁 平成26年6月5日判決
事件番号 平成25年(ワ)第93号
被告法人が開設する診療所において被告医師による羊水検査を受けた原告A及びその夫である原告Bが,その検査結果報告に誤りがあったために原告Aは中絶の機会を奪われてダウン症児を出産し,同児は出生後短期間のうちにダウン症に伴う様々な疾患を原因として死亡するに至ったとして,被告らに対し,不法行為ないし診療契約の債務不履行に基づき,それぞれ損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,被告らが,羊水検査の結果を正確に告知していれば,原告らは,中絶を選択するか,又は中絶しないことを選択した場合には,先天性異常を有する子どもの出生に対する心の準備やその養育環境の準備などもできたはずであり,原告らは,被告医師の羊水検査結果の誤報告により,このような機会を奪われたといえるとし,原告らに対する不法行為ないし診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償として,原告らそれぞれにつき500万円の慰謝料を認めるのが相当であるとした。