胃瘻造設手術を受けた患者,腹膜炎を発症,腹腔内に膿瘍が形成され,人工肛門の造設を強いられた事例
胃瘻造設手術を受けた患者が,腹膜炎を発症,腹腔内に膿瘍が形成され,人工肛門の造設を強いられることとなった事例
神戸地裁 平成28年3月9日判決
事件番号 平成26年(ワ)第657号
本件は,胃瘻造設手術を受けた患者が,医師の注意義務違反により,腹膜炎を発症し,腹腔内に膿瘍が形成され,その治療のため,入院を余儀なくされたばかりか,人工肛門の造設を強いられ,死亡時まで人工肛門による排便を余儀なくされるなど耐え難い精神的苦痛を被ったなどと主張し,亡患者の妻が,債務不履行又は不法行為に基づき,損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,医師には,胃瘻のチューブ交換のため瘻孔に新しいチューブを再挿入する際,瘻孔が横行結腸を貫通して形成されているため脆弱で損傷を生じやすい状態であることを認識することができたのであるから,上記瘻孔を損傷させないよう細心の注意を払ってチューブを再挿入すべきであったにもかかわらず,漫然と誤穿刺により脆弱化した瘻孔に新たな胃瘻チューブを再挿入して瘻孔を損傷させた過失があったと認められるとして,相当額の損害を認めた。