頸椎前方骨棘切除手術を受けた患者が,適切な術後管理を怠った等の医師らの過失により翌朝呼吸不全で死亡した事例
頸椎前方骨棘切除手術を受けた患者が,適切な術後管理を怠った等の医師らの過失により翌朝呼吸不全で死亡した事例
京都地裁 平成25年6月13日判決
事件番号 平成22年(ワ)第1991号
本件は,フォレスター病(強直性脊椎骨増殖症)と診断され,被告病院で頸椎前方骨棘(こつきょく)切除手術を受け翌朝に死亡した患者の遺族である原告らが,呼吸抑制等の副作用のある術後麻酔薬を投与したにもかかわらず,適切な術後管理を行わなかった等の被告病院医師らの過失により当該患者が呼吸不全で死亡したと主張して,被告に対し損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,患者の死亡は,急に気道が完全閉塞してガス交換ができなくなったという窒息死ではなく,緩慢に呼吸不全が進行した結果であって,頻回に痰を吸引すれば避けることができたと思われ,被告病院の組織としての看護体制の不備(法人組織としての過失)に起因して死亡したものといえるとし,被告は患者の死亡により原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負うとした。その損害額は,息ができないということが人にとって耐え難い苦痛であること,術後付き添っていた原告らが帰宅させられた後に病室で一人死に至ったことその他本件審理に顕れた一切の事情を考慮すると,患者の苦痛や無念を慰藉するための慰藉料として2400万円が相当であるとし,また逸失利益相当額等を認め,その余の請求は棄却した。