右脛骨粗面移動術及び右膝蓋骨内側支帯縫縮術を受けた後コンパートメント症候群を発症したことについて,適切な処置を怠ったとして損害賠償を求めた事例
右脛骨粗面移動術及び右膝蓋骨内側支帯縫縮術を受けた後コンパートメント症候群を発症したことについて,適切な処置を怠ったとして損害賠償を求めた事例
東京地裁 平成24年10月11日判決
事件番号 平成22年(ワ)第46609号
本件は,患者が,被告病院において右脛骨粗面移動術及び右膝蓋骨内側支帯縫縮術(以下「本件手術」という。)を受けた後,コンパートメント症候群(四肢の骨,筋膜,骨膜によって構成されるコンパートメント(筋区画)内の内圧が上昇し,コンパートメント内の動脈の攣縮をきたして動脈血流が減少し,組織の血行障害を招いて筋肉と神経の壊死を生じる病態)を発症したことについて,原告ら(患者,同人の夫及び母)が,被告病院の医師らには,コンパートメント症候群に対する緊急手術等の処置を怠った注意義務違反があったとして,債務不履行又は不法行為に基づき損害賠償を求めた事案である。 なお,後遺障害による損害については,症状が未固定であることから,本件訴訟では,請求の対象とされていない。
裁判所は,被告病院の医師らには,コンパートメント症候群の疑いが強まった時点で,すみやかに内圧測定を行うべき義務があったというべきであり,これを怠った点に注意義務違反が認められるとしたものの,この注意義務違反がなければ,患者に線維性拘縮及び右足首の神経麻痺等の症状が生じることがなく,本件入院治療を受けることがなかったことに高度の蓋然性があるということはできず,被告病院の医師らの上記注意義務違反と原告に生じた結果との間に因果関係を認めることはできないとして,原告らの請求をいずれも棄却した。