尿管皮膚瘻術を受けるなどした後,所要の検査を実施して治療をすべき義務を怠り,膀胱腫瘍が原因で死亡した事例
尿管皮膚瘻術を受けるなどした後,所要の検査を実施して治療をすべき義務を怠り,膀胱腫瘍が原因で死亡した事例
岐阜地裁 平成25年4月17日判決
事件番号 平成22年(ワ)第577号
本件は,被告病院において尿管皮膚瘻術(尿管を切断して直接腹部皮膚上に接続することにより排尿管理を行うことを目的とする尿路変更術)を受けるなどした後,膀胱腫瘍が原因で死亡した患者の子である原告らが,患者が死亡したのは,被告病院の担当医師が,膀胱洗浄の際の排液に血液が混入していることを確認した時点において,膀胱癌の発症を疑ってこれを検索・鑑別するための検査等を実施する義務があったにもかかわらず,これを怠った過失によるものである旨主張して,使用者責任又は診療契約上の債務不履行に基づき,被告に対し,損害賠償(逸失利益,慰謝料等)を求めた事案である。
裁判所は,亡患者は膀胱部に生じた腫瘍からの大量出血が直接の原因で死亡しており,担当医師には,膀胱洗浄を実施し血性排液を確認した時点において,膀胱癌が発症していることを疑い,適宜血性排液の細胞診,膀胱鏡検査,CT検査及びMRI検査等所要の検査を実施して,膀胱癌が発症しているか否かを検索した上,当該検査結果に応じた治療を実施すべき義務(以下「検索治療義務」という。)を負っていたところ,これを怠った検索治療義務違反があり,この義務違反と患者の死亡との間に相当因果関係が認められるとした。そして,原告らには認定損害額の6割に相当する額の損害が生じたものと認めるのが相当であるとし,原告のその余の請求はいずれも棄却した。