下腹部痛及び呼吸苦を訴えて救急搬送され診療を受けた患者が,大動脈解離によって死亡した事例
下腹部痛及び呼吸苦を訴えて救急搬送され診療を受けた患者が,大動脈解離によって死亡した事例
札幌地裁 平成24年9月5日判決
事件番号 平成19年(ワ)第781号
本件は,下腹部痛及び呼吸苦を訴えて救急車で被告病院に搬送され、診療を受けた患者(当時23才)が,大動脈解離によって死亡したことについて,亡患者の相続人である原告らが被告に対し,被告病院の医師らには的確な検査をすべき義務を怠ったなどの注意義務違反があったなどと主張して,診療契約上の債務不履行に基づき損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,当時の医療水準にかなう医療行為が実施されていたとしても,患者がその死亡時点においてなお生存した高度の蓋然性を認めることはできないものの,医療水準にかなう医療行為が実施されていたならばその死亡時点においてなお生存した相当程度の可能性を侵害され,その結果被った精神的苦痛に対する慰謝料として, 患者は未だ若年であったこと,他方,若年者の大動脈解離の発症は稀有であること,検査の実施の遅れこそあるものの,被告病院医師は胸部単純CT検査を実施しており,その検査画像上の異常所見は一見明白とまでは言い難いものであることなどのほか,本件に現れた一切の事情を総合考慮し,相当額を認め,その余の請求は棄却した。