病院スタッフが新生児の母子同室を実施した際の経過観察等を怠り,心肺停止に至って低酸素性虚血性脳症の重度後遺障害を負った事例
病院スタッフが新生児の母子同室を実施した際の経過観察等を怠り,新生児は心肺停止に至って低酸素性虚血性脳症の重度後遺障害を負った事例
福岡地裁 平成26年3月25日判決
事件番号 平成23年(ワ)第2092号
本件は,被告病院において出生した新生児とその両親である原告らが,被告に対し,被告病院の医師,看護師,助産師等(以下,これらを併せて「被告病院スタッフ」という。)が新生児と原告(母親)の母子同室を実施した際に,十分な説明や経過観察等の看護を行わなかった過失により,新生児が低体温,低血糖,窒息のいずれか又はこれらが複合した状態に陥って心肺停止に至り,低酸素性虚血性脳症になったと主張して,不法行為又は債務不履行に基づき,損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,被告病院は,母子同室において危険を回避するための経過観察義務を負うとところ,被告病院スタッフは,新生児を母親に預けて(第2回母子同室)から,母親がナースコールをするまでの約1時間20分にわたり,一切,経過観察を行っていなかったのであるから,上記経過観察義務に違反したといわざるを得ないとして,被告には不法行為による損害賠償義務が認められるとした。また,新生児の心肺停止の原因が,窒息・ALTEのいずれであったにせよ,被告病院スタッフが経過観察を果たしていれば,新生児が重度の後遺障害を負う結果を回避できた高度の蓋然性があると認めるのが相当であるとした。 よって,本件分娩の経過,新生児が負った後遺障害の程度を含む一切の事情を考慮し,逸失利益,将来介護費,慰謝料等相当額を認容し,その余の請求を棄却した。