PCPSによる治療が可能な医療機関へ転送すべき注意義務を怠り,劇症型心筋炎で死亡した事例
PCPSによる治療が可能な医療機関へ転送すべき注意義務を怠り,劇症型心筋炎で死亡した事例
長崎地裁 平成26年3月11日判決
事件番号 平成23年(ワ)第378号
本件は,被告病院に入院していた患者(当時13歳)が劇症型心筋炎で死亡したことについて,亡患者の父母である原告らが,被告病院担当医師の過失によって患者が死亡したと主張して,担当医師の使用者である被告に対し,損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,被告病院では,PCPS(体外心肺補助(経皮的心肺補助))による治療を行うことができないのであるから,患者に対してPCPSを装着施行して入院治療を行うためには,PCPSによる治療が可能な医療機関へ当該患者を転送する必要があるところ,担当医師は,血液検査結果が判明した時点で重症な急性心筋炎(急激に心筋逸脱酵素が上昇するほどの劇症な経過をたどる急性心筋炎)を疑い,PCPSによる治療が可能な医療機関へ亡患者を転送すべき注意義務があったのにこれを怠り,上記医療機関へ転送しなかったものであり,上記転送義務に違反した行為によって患者は死亡したとして,原告らの請求を逸失利益,慰謝料等相当額を認容した。