GVHD(移植片対宿主病)に罹患した小児が,心外膜開窓手術の麻酔導入中に麻酔科医らのミスにより死亡したとして損害賠償を求めた事例
GVHD(移植片対宿主病)に罹患した小児が,心外膜開窓手術の麻酔導入中に麻酔科医らのミスにより死亡したとして損害賠償を求めた事例
京都地裁 平成20年4月30日判決
事件番号 平成15年(ワ)第2597号
本件は,急性リンパ球性白血病の治療として受けた末梢血幹細胞移植術の合併症であるGVHD(移植片対宿主病)に罹患した小児(当時4歳2か月)が,被告病院小児心臓外科で心外膜開窓手術を受けるため入院し,同手術に先立って行われた麻酔導入中に麻酔科医らの①挿管困難,換気困難の予見義務違反,死亡結果回避義務違反,②ファイバースコープ,ラリンゲルマスク及び輪状甲状間膜穿刺の施行義務違反(不施行),③気管切開の適時施行義務違反(遅延)などの不完全履行,または,過失により死亡したとして,原告ら(小児の両親)が被告に対し,主位的に債務不履行に基づき,予備的に不法行為に基づいて,損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,被告病院の麻酔科医らには,小児の死亡との間では相当因果関係が認められないものの,問診義務違反,動脈血ガス分析の施行義務違反(未施行),また,原告らに対する説明義務違反があるところ,同各義務違反によって原告らは,小児に対する適切な診療がなされなかった,治療方法の選択について自己決定ができなかったなど精神的苦痛を被ったことが推認され,同精神的苦痛を金銭的に評価した相当額を認め,その余の請求は棄却した。