一絨毛膜二羊膜性双胎(MD双胎)の第1児が重度の脳障害を負って出生した事例
一絨毛膜二羊膜性双胎(MD双胎)の第1児が重度の脳障害を負って出生した事例
仙台地裁 平成24年7月19日判決
事件番号 平成21年(ワ)第554号
本件は,一絨毛膜二羊膜性双胎(MD双胎。一卵性双生児のうち,各胎児が1つの胎盤を共有しつつ,個別の羊膜を有している状態。)の第1児が重度の脳障害を負って出生したのは,被告病院担当医師が第1児の胎児心拍を確認して直ちに帝王切開により分娩し,あるいは,胎児心拍の監視を継続して異常を発見した際には直ちに帝王切開により分娩すべきであるのに,これらの義務を怠ったことによるものであるとして,原告(第1児。法定代理人親権者父母)が,被告に対し,診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償を求めた(損害額合計の一部請求)事案である。
裁判所は,原告主張の時点において,被告担当医師が原告を胎児ジストレス(胎児が様々な病態から健康に問題がある状態を胎児機能不全といい,中でも,急速遂娩が必要と考えられる胎児の状態。)と診断して直ちに帝王切開をすべきであったということはできないとしたものの,本件がMD双胎というハイリスク分娩であること等を併せ考慮すると,被告担当医師には引き続きNST(分娩監視装置によるノンストレステスト)による監視を継続すべき注意義務に違反した過失があるとしたが,その過失と原告の脳性麻痺との間に因果関係を認めることはできないとして,原告の請求をいずれも棄却した。
また,原告及びその家族が置かれた現在の状況から見て,産科医療補償制度(平成21年1月1日施行)の適用対象外である本件について,原告が救済を求める心情は理解することができるものの,法的に見て,原告の主張を採用することはできないとした。