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慢性早剥により人工妊娠中絶処置を受けたことについて,担当医師には患者らの同意を得ないまま本件処置の実施を決定した過失がある等主張し損害賠償を求めた事例

慢性早剥により人工妊娠中絶処置を受けたことについて,担当医師には患者らの同意を得ないまま本件処置の実施を決定した過失がある等主張し損害賠償を求めた事例

岡山地裁 平成29年4月26日判決
事件番号 平成26年(ワ)第460号

 本件は,被告病院において人工妊娠中絶処置を受けた患者及びその夫が,本件処置の実施を決定した担当医師には,①患者には人工妊娠中絶の医学的適応がなく,本件処置を実施すべきでないにもかかわらずこれを実施する決定をした過失,及び,②本件処置の実施を決定するに当たり,原告らの同意を得るべきであるにもかかわらず,その同意を得ないまま本件処置の実施を決定した過失があり,これらにより原告らは精神的苦痛を受けたとして,被告に対し,債務不履行または使用者責任に基づき,それぞれ慰謝料等の損害賠償を求めた事案である。

 裁判所は,上記①について,担当医師が患者の症状を慢性早剥(常位胎盤早期剥離には,慢性と急性のものがあり,慢性のものを慢性早剥という。)であると診断しこれ以上の妊娠継続によって患者の健康が損なわれ生命を危うくすると判断したことは,医師の専門的裁量の範囲を超えるものではないといえ,その他一切の事情を考慮しても,本件において本件処置の医学的適応があると判断した担当医師に過失は認められないとした。  また,上記②について,本件処置の実施の決定は,患者の同意を得た上でなされたものであるとしたが,夫については,その配偶者である患者に対して本件処置をするか否かという重大な場面において自己の意思を表明する機会を奪われたといえ,この点において夫は精神的苦痛を受けたことが認められるとし,この精神的苦痛に対する慰謝料相当額を認め,その余の請求を棄却した。



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