急性喉頭蓋炎の患者が二次救急病院に入院後,転送先の三次救急病院で低酸素脳症により死亡した事例
東京地裁 平成24年1月26日判決
事件番号 平成21年(ワ)第4777号
本件は,急性喉頭蓋炎の患者が,被告病院(本件当時は二次救急病院)に入院後,転送先の三次救急病院で低酸素脳症により死亡したことについて,遺族である原告らが,被告医師らには,①患者に対し,常時かつ慎重に経過観察を行いつつ,容態急変前に外科的気道確保が可能な救急病院に転送し,又は容態が急変した場合に直ちに転送するための準備をすべき具体的な義務を負っていたにもかかわらず,これを怠った過失,②2回目の気管挿管に失敗した時点で速やかに外科的気道確保をなすか,外科的気道確保の可能な救急医療機関に転送すべき義務があったにもかかわらず,漫然と挿管を繰り返してこれを怠った過失があるなどと主張し,被告らに対して,不法行為に基づき(被告病院に対しては使用者責任),損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,上記①について,原告らの主張する受診後の経過観察・転送義務についての過失は認められないとしたが,上記②について,2回目の気管挿管に失敗した時点で気管挿管は困難と判断し,直ちに外科的気道確保をなすか,自らできない場合は外科的気道確保の可能な他の医療機関に転送すべき注意義務があったところ,被告医師らにはこのような措置をとらなかった過失があり,この過失と患者の死亡との間には相当因果関係があると認定し,被告医師らに対しては不法行為に基づき,被告病院に対しては使用者責任に基づき,連帯して原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負うとして,逸失利益,慰謝料等相当額の支払いを命じた。