進行性の左眼視力低下治療のための前頭側頭開頭手術を受けたところ,誤って右側を開頭したため結果として両側頭部の開頭手術を受けることとなった事例
岡山地裁 平成23年5月18日判決
事件番号 平成20年(ワ)第486号
本件は,被告病院において進行性の左眼視力低下治療のための前頭側頭開頭手術を受けた患者が,担当医師が本来は左側を開頭すべきであったのに誤って右側を開頭したため,結果として両側頭部の開頭手術を受けることとなり,しかも,担当医師は側頭筋を切開しない開頭法を採用すべきであったのに側頭筋を切開する術式を採用したため,開口制限やこめかみ部分付近に醜状痕が生じたなどと主張して,被告に対し,医療契約上の債務不履行に基づき損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,担当医師が開口制限についての説明をしないまま患者から開頭手術に対する承諾を得たことについて注意義務違反があったとしても,同注意義務違反と患者に生じた開口制限との間に因果関係を認めることはできないとし,また,担当医師に側頭筋を切開しない方法を採用すべき注意義務違反は認められないとした。しかし,本件における諸事情を総合考慮すれば,本件右側手術を受けたことにより患者が少なからぬ精神的苦痛を被ったとして慰謝料相当額を認め,その余の請求を棄却した。