甲状腺機能障害の患者が、B型肝炎の診療契約が成立していたのに専門医への紹介義務を怠ったとして損害賠償を請求した件
京都地裁 平成28年2月17日 判決
事件番号 平成25年(ワ)第3628号
B型肝炎ウイルスキャリアの男性が、甲状腺機能障害と診断され、B型肝炎が悪化した場合は別病院を紹介するとし診療を受けていたが、他病院で肝癌、B型肝硬変、食道静脈瘤と診断された。
患者は、B型肝炎が悪化した場合は、B型肝炎の治療を目的とする診療契約を結んでいたにもかかわらず、適切な診断を怠った結果、肝癌に罹患したと主張し、損害賠償を請求した。
裁判所は、B型肝炎の検査など、積極的な診療契約が成立したと認めることは困難だが、肝機能が悪化した場合には別病院を紹介することも含まれ、血液検査によって肝炎の進行の可能性を予見することができたと評価でき、別病院を紹介して専門機関で治療を受けることができれば、肝癌への進行は避けられなかったとしても、進行を遅らせることは可能であったことから、国からの和解金(B型肝炎ウイルスを原因とし肝硬変を発症したとして国から3600万円の支給)を控除して、954万4675円の支払を認めた。