ベナンバックスを過剰投与され死亡したことについて,投与を指示した医師のほか,調剤及び調剤監査を行った薬剤師らにも過失が認められた事例
東京地裁 平成23年2月10日判決
事件番号 平成20年(ワ)第5781号
本件は,肺癌の再発,転移で被告病院に入院していた患者に対し,ベナンバックス(ペンタミジン)が3日間連続で常用量の5倍投与され死亡したことについて,亡患者の相続人である原告らが,投与を指示した医師のほか,上級医の地位にあった医師,主治医代行者であった医師,調剤・調剤監査を行った薬剤師らにはそれぞれ過失があると主張し,被告病院,同医師ら及び同薬剤師らに対し,不法行為(共同不法行為。被告病院に対しては,使用者責任。)に基づき,損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,本件におけるベナンバックスの過剰投与は,投与を指示した医師が,医薬品集の左右の頁を見間違えて処方指示をしたという初歩的かつ重大な注意義務違反に起因し,投与を指示した医師の行為と調剤・調剤監査を行った薬剤師らの行為は,調剤指示と調剤及び監査という一連の流れの中の客観的に関連共同した行為であって,これら関連共同した行為が患者の死亡という結果を招いたものであり,ベナンバックスの過剰投与と患者の死亡との間に相当因果関係を認めることができるとして,慰謝料等相当額を認容し,その余の請求については棄却した。