胃癌と診断され胃の亜全摘手術を受けた後に胃癌ではなかったことが判明した事例
東京地裁 平成23年5月19日判決
事件番号 平成20年(ワ)第16546号
本件は,被告病院において胃癌と診断されて胃の亜全摘手術を受けた患者が,後に胃癌ではなかったことが判明したことについて,担当医師には,生検検査において胃癌でないにもかかわらずグループⅤ(胃癌取扱い規約によれば,「癌であると確実に診断される病変」に対して適用される分類)と誤診した注意義務違反がある等主張して,被告に対し,診療契約の債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,本件生検標本に対する当初の病理診断において注意義務違反があったとまではいえないとしたものの,本件手術前,胃の病変部の内視鏡による肉眼的所見が変化を来したのに臨床担当医師らは再検討することなく手術に踏み切ったものであり,適切な再検討を実施していた場合には患者の胃の亜全摘手術は回避されたと推認され,手術前総合診断における注意義務違反と患者の胃亜全摘手術との間には因果関係が認められるとして,逸失利益,後遺障害慰謝料等相当額の限度で認容し,その余の請求については棄却した。