産婦が分娩中に低酸素状態で新生児脳性麻痺が残った事案で、外出中だった医師の責任が認められた事例
千葉地裁 平成2年3月28日
昭和59年(ワ)第944号
主 文
一 被告は、原告XAに対し金七七七八万三八八四円、同八木XBに対し金四四〇万円、同XCに対し金六六〇万円及びこれらに対する昭和五九年二月一六日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は三分し、その二を被告の、その余を原告らの各負担とする。
四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事 実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告XAに対し金一億六六八二万円、同八木XB及び同XCに対し各金一六五〇万円及びこれらに対する昭和五九年二月一六日から各支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 当事者
(一) 原告XA(以下「原告XA」という。)は、昭和〇年〇月〇日、被告の経営する〇〇〇(以下「被告医院」という。)で出生したものであり、原告XAXB(以下、「原告XB」という。)はその父、同XC(以下、「原告XC」という。)はその母である。
(二) 被告は、被告医院を開設し、経営している医師である。
2 原告XCの分娩
(一) 原告XCは昭和〇年〇月に妊娠し、実家に近い被告医院で、同年〇月〇日に初診を受け、昭和五九年一月一一日から同所に通院した。
(二) 原告XCは、出産予定日の翌日である昭和〇年〇月〇日午前六時ころに陣痛が始まり、同日午前一一時ころ被告医院に入院し、午後五時五二分ころ原告XAを仮死状態で分娩した。
3 被告の過失
(一) 医師は、出産に際し、胎児又は母体に異常が発生しないかどうかを監視し、異常を発見したら適切な措置をとることが可能であるように病院内等に待機すべき義務があるのに、被告は午後三時ころから外出して右義務を怠った。
(二) 被告及び被告の履行補助者である看護婦は、分娩第二期が近づいた午後四時三〇分過ぎころから分娩監視装置により継続的監視を行うべきであったのに、これを怠った。
(三) 胎児の原告XAは午後四時三○分ころまでは、順調な分娩経過を辿っており、同時刻ころ低酸素状態に陥った。この状態は胎児仮死となって現れ、これは分娩監視装置により胎児心拍数を監視することによって覚知し得るものである。
被告は、胎児仮死を発見したならば、子宮口開大の程度に応じて帝王切開術か、鉗子又は吸引分娩術を行うことにより遅くとも原告XCの子宮口が全開大になった午後五時二〇分までに原告XAを低酸素状態から救出しなければならず、また右の時点で急速遂娩術を施すことが可能であった。
すなわち、原告XCの子宮口は、午後五時には八センチメートル、五時二〇分には全開大になっているので、鉗子分娩及び吸引分娩が五時ないし五時二〇分には可能であり、それ以前の時間には帝王切開術が妥当する。鉗子分娩及び吸引、分娩には準備時間を要しないし、帝王切開についても、四時三〇分以降分娩監視装置により監視して胎児仮死を発見していれば、それから準備所要時間である三○分の経過した五時過ぎには、執刀が可能であった。
被告は、右の時間帯に外出しており、かつ看護婦が分娩監視装置による監視を怠った結果、原告XAの胎児仮死の状態を発見できないまま自然分娩に任せた。
4 被告の過失と損害の発生との因果関係
原告XAは、以上のとおり、分娩過程において低酸素状態に陥ったことにより、脳性麻痺(多房性脳軟化症)になった。被告が外出せず、又は看護婦が前記の監視を励行し、被告が速やかに前記の急速遂娩術の措置をとっていたならば、原告XAを低酸素状態から救出することにより、右結果を回避することができた。
5 原告らの損害
(原告XAの損害)
(一) 入院及び自宅療養諸経費
(1) 原告XAの療養経過は、(1)昭和〇年〇月〇日から同年〇月まで入院、(2)昭和〇年〇月から同年〇月まで在宅、(3)昭和〇年〇月から昭和〇年〇月まで入院、(4)昭和〇年〇月から昭和〇年〇月〇日まで在宅、(5)昭和〇年〇月〇日から同年〇月〇日まで入院、(6)昭和〇年〇月〇日から同年〇月〇日まで在宅、による治療であった。
(2) 原告XAの在宅療養に必要な諸経費は、一日当たり最低二七四三円であり、入院雑費は一日当たり一二〇〇円である。
(3) したがって、昭和〇年〇月〇日から昭和〇年末日までの入院雑費は、一五七万九二〇〇円(二〇〇円×一三一六日)である。
昭和〇年以降は、それまでの実績により年間一〇か月が在宅治療で、二か月が入院治養であるから、八九万四二五〇円(一二〇〇円×三六五日×二/一二+二七〇〇円×三六五日×一〇/一二)であり、昭和〇年〇月〇日から平成〇年〇月〇日までの分は、一五五万五七五〇円(八九万四二五〇円×六三五/三六五)である。
よって、現在までの合計は、三一二万円である。
(4) 将来分については、年間一〇か月以上の在宅治療が見込まれるので、平均余命六九年間としてライプニッツ方式で計算すると、一七二六万円(八九万四二五〇円×一九・三〇九八)となる。
(二) 付添看護及び介護の費用
(1) 原告XAは、一日二四時間の看護体制を必要とする。その付添看護、介護に要すべき費用が、損害である。
原告XCが従事した看護に要する費用は、職業的看護補助者の付添料金中、原告XAの入院期間については基本日給額相当額、在宅期間については泊込日給額相当額の、それぞれ利潤の要素二割を減額した八割とすべきである。
(2) 昭和〇年〇月〇日から同〇年〇月〇日までは、全期間について基本日給額で計算すると、一七三万一五六〇円(五九三〇円×○・八×三六五日)、昭和〇年〇月〇日から同〇年〇月〇日までは、全期間入院したので、一七八万九九六〇円(六一三〇円×〇・八×三六五日)、昭和〇年〇月〇日から同六二年三月三一日までは、同じく一八六万二九六〇円(六三八〇円×○・八×三六五日)、昭和六二年四月一日から同六三年三月三一日では、半年ずつ入院及び在宅したとして計算すると、九五万八九二〇円(六五五〇円×〇・八×三六六×一/二)及び一四〇万六九〇四円(九六一〇円×〇・八×三六六×一/二)、昭和六三年四月一日から平成元年三月三一日までは、一年のうち少なくとも一〇か月は在宅治療なので、三二万三一四六円(六六四〇円×○・八×三六五×二/一二)及び二三七万四九三三円(九七六〇円×○・八×三六五×一〇/一二)、平成元年四月一日から同年九月二七日までは、一六万三二〇〇円(六八〇〇円×〇・八×一八〇×二/一二)及び一一九万七六〇〇円(九九八〇円×○・八×一八〇×一〇/一二)、となる。
結局以上の合計は、一一八〇万円である。
(3) 将来分については、一年のうち一○か月間の在宅期間は、日中八時間は職業的付添人一名を必要とし、その他の時間は原告XC及び同XBが看護する必要がある。
したがって、年額は、四八二万七七三三円〔(六八〇〇円十九九八〇円×○・八)×三六五日×一〇/一二+六八〇〇円×○・八×三六五×二/一二〕である。
これも平均余命六九年としてライプニッツ方式で計算すると、九三二二万円(四八二万七七三三円×一九・三〇九八)となる。
(4) 以上の損害の合計額は、一億二五四〇万円である。
(三) 逸失利益
全年齢男子労働者平均賃金に準拠して、ライプニッツ方式で算定すると、三四三五万円〔四五五万一〇〇〇円×(一九・二三九〇-一一・六八九五)〕である。
(四) 慰謝料
金四〇〇〇万円が相当である。
(五) 弁護士費用
本件は、医療過誤事件であり、複雑かつ専門的な問題点を多く含むので、原告XAは法定代理人親権者である原告XB及び同XCにより、本件訴訟代理人弁護士らに本件訴訟追行を委任したが、事案に鑑み、弁護士費用金一〇〇〇万円を被告に負担させるべきである。
したがって、原告XAの損害額は、二億○九七五万円であるが、そのうち金一億六六八二万円の賠償を求める。
(原告XC及び同XBの損害)
右両名にとって、原告XAは結婚して初めての子であり、喜びと期待をもって誕生を待っていたところ、被告の過失により一転苦悩の淵に突き落とされた。しかも、被告の対応は、不誠実である。右両名の怒りと口惜しさに対する慰謝料は、それぞれ金一五〇〇万円が相当である。
そして、原告XAの場合と同様に、弁護士費用としてそれぞれ金一五〇万円を被告に負担させるべきである。
したがって、原告XC及び同XBの損害額は、それぞれ金一六五〇万円となる。
6 結論
よって、原告らは、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、原告XAは前記損害内金一億六六八二万円、原告XB及び同XCは前記各損害金一六五○万円並びにこれらに対する不法行為の日の翌日である昭和〇年〇月〇日から各支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1は認める。
2 同2は認める。
3(一) 同3の(一)のうち、医師に母体及び胎児の状態を監視し、適切な措置をとる義務のあること、被告が午後三時ころ外出したことは認めるが、在院しなければならない義務のあることは争う。医師の主たる義務は、スムーズな娩出の介助であり、分娩第二期に介助するのが目的であるから、分娩第一期の入院時から常時待機する義務はなく、第二期までの間は看護婦をして観察させ、状況を把握していれば足りる。
本件は、分娩第一期までは通常の進行で、分娩第二期が異常に早い進行をしたものであるが、そのような経過を辿るという徴候は認められず、医学的な知見によって第二期を早くとも午後七時三〇分ころになると予測して外出をした被告には義務違反はない。
(二) 同(二)は否認する。被告医院では、原告XCが午後四時五六分に破水した時から、分娩監視装置を装着して連続的に監視を開始した。しかし、五時二九分ころ、原告XCが陣痛発作の苦痛で暴れて装置がはずれ、記録不能となり、以後は瞬間的に測定している。
一般に分娩監視装置により監視する義務はない。同装置のない医院も多数存在している。また、胎児に対してたえず監視して危険徴候を早期に発見するよう努める必要のある時期は分娩第二期であるので、午後四時三〇分ころ監視装置を装着せよとの原告らの主張は根拠がない。
(三) 同(三)のうち、医師の一般的義務として、胎児の心拍数の推移を監視して胎児仮死の早期発見に努め、切迫仮死の状況に応じて急速遂娩術をとり胎児を低酸素状態から救出すべき義務があることは認める。
しかし、被告は履行補助者であるXE看護婦を介して右義務を履行している。すなわち、胎児心拍数については、入院した午前一一時ころから測定し、破水後には分娩監視装置による監視を開始した。そして、分娩監視の結果、胎児心拍数が低かったため、直ちに毎分酸素三リットルの投与を行ったところ、胎児心音は徐々に回復した。
また、子宮口が全開大になったのは、午後五時二〇分ころであるから、それまで鉗子、吸引分娩は行うべきではない。また、本件では子宮口全開大から三二分間で正常分娩で娩出しているのであるから、一時間程度を要する帝王切開による必要はないし、原告XCは弛緩性出血を生じたのであり、帝王切開を行っていたら、子宮摘出や生命への危険も十分考えられた。
4 同4の因果関係は否認する。
本件の胎児仮死の原因は、胎盤の早期一部剥離、過強陣痛、臍帯への圧迫などの主たる原因と頭蓋内出血、感染症なども否定できず、これらの複合原因によるものであり、被告が在院していても、胎児仮死及び新生児仮死による脳性麻痺の結果は回避できなかった。
5 同5の損害額はすべて争う。
第三 証拠〈省略〉
理 由
一 当事者及び原告XCの分娩
請求原因1項(当事者)、2項(原告XCの分娩)の事実は当事者間に争いがない。
二 被告の過失について
1 まず原告XCの分娩についてみると、前記争いのない事実に、〈証拠〉を併せると、以下の事実が認められる。
(一) 原告XCは、昭和〇年〇月〇日午前六時ころ(以下特に年月日を記載していないときは、昭和〇年〇月〇のことである。)陣痛が開始した。陣痛間隔は五分であった。原告XCは午前一一時に被告医院に来て、被告が診察したところ、子宮口四センチメートル開大で陣痛間隔は五分であった。以後は看護婦が診察し、正午には陣痛間隔は五分で子宮口五センチメートル開大であり、午後一時には子宮口五センチメートル開大で陣痛間隔は三分であった。被告は、千葉大学病院で行われる講演会に出席するために午後三時から三時半の間に出発した。被告医院と千葉大学病院とは、車で三〇分ないし四〇分かかる。この時被告は、看護婦に原告XCの状態を尋ね、大した変化はなく、ゆっくりした分娩経過である旨報告を受けた。被告は、通常の分娩では、産婦の子宮口が全開大になってから胎児の娩出が始まり、その後三〇分位して出産に至るため、産婦の子宮口が八センチメートル開大位で陣痛が三分位になった時点で産婦を分娩室に入れて、出産の待機をさせていたので、看護婦に分娩室に入った産婦を確認させ、そのような産婦がいなかったところから、原告XCの分娩経過も遷延しているので、出産までは、間があり、四時から六時までの講演会に出席しても大丈夫と判断して自家用車で外出した。被告は、その際、看護婦に行き先を告げ、緊急連絡用ベルを携帯して出た。
(二) 原告XCは、午後四時には子宮口開大六センチメートル、陣痛間隔二、三分となり、四時三〇分も同様であり、児心音その他分娩の経緯が順調であった。
(三) XE看護婦は、原告XCの担当になった四時三〇分以降、内診による子宮口の開大の状況、児心音の測定、陣痛の観察を行っていたところ、四時五六分に原告XCが破水し、陣痛が一分から二分間隔で強くなってきたので、分娩監視装置で監視することにした。
分娩監視装置は、被告診療所で通常使用されているコロメトリックスという機械で、マイク状のトランスデューサを所定の位置にべルトで固定して陣痛と心音を観測し、一分間に三センチメートルの早さで流れる用紙に記載するものである。
(四) XE看護婦は、五時ころ、原告XCの子宮口が八センチメートル開大となり、児心音が九〇台に下がり、原告XCの陣痛が強そうであったので、原告XCに酸素を投与し、血管確保のためにブドウ糖の点滴をするかたわら、被告に連絡を取ろうとした。XE看護婦は、まず、被告の行き先である千葉大学婦人科病棟のナースセンターへ電話をして、被告に帰るよう言おうとしたが、つながらなかったので、五時二〇分か三〇分ころ、所持していたポケットベルを押した。
(五) 分娩監視装置の監視結果は、監視当初から、児心音が九〇前後という高度の徐脈を示し、細変動が消失し、五時五分以降は、遅発一過性徐脈を示し、総合して、重症の胎児仮死の疑いを示していた。
(六) 酸素投入後五時八分以降は、児心音は、概ね一〇〇以上に回復した。しかし、前記のとおりの細変動の消失や遅発一過性徐脈のみられることに変わりはなく、五時二〇分になると、徐脈の低いところでは、心拍数は再び九〇台の高度徐脈を示していた。
(七) また、カルテには、四時五六分の段階で、陣痛「強」と記録され、原告XCの苦痛も激しかった。周期は約一分に一回あるいは更に短いという、通常あまりみられない子宮収縮活動の異常亢進状態を示した。
(八) 五時二九分には、原告XCが体を動かしたはずみで、トランスデューサが所定の位置からはずれて連続的監視はできなくなり、XE看護婦は、以後児心音を測定する時には、トランスデューサを一時的にあてて表示された数を、分娩室の時計で時刻をみて記録した。
(九) 被告は、五時四五分か五〇分ころ、被告医院へ電話を入れ、電話を受けた看護婦の補助者のXDの連絡により、すぐに車を運転して被告医院に向かった。
(一〇) 原告XCは、五時二〇分には、子宮口が全開大となり、排臨が五時四七分、発露が五時五〇分、娩出が五時五二分であった。原告XAは、生まれた時には仮死状態(アプガースコア五点)であった。XE看護婦は、状態改善のために、原告XAに対し、気管カテーテルで吸引をし、酸素投与をし、メイロンを注射した。
その結果、原告XAは、五分後にはアプガースコア九点、一〇分後には一〇点にまで回復した。
XE看護婦は、六時一〇分ころ、原告XAを分娩室内の哺育器に入れた。
(一一) 被告は、六時一〇分ころ帰ってきて、原告XAに対し、酸素吸入とマウスツーマウスの人工呼吸を行い、七時三〇分ころ、原告XAを新生児室の哺育器に入れた。原告XCに対しては、麻酔をして会陰裂傷の縫合を行った。また、原告XCの出血に対する措置として輸血を行った。
(一二) なお、原告XCについては、出産時に、羊水が血性であった。これは、通常胎盤早期剥離を示すものである。胎盤は、五八〇グラムで五センチメートル×七・八センチメートルの大きさで、凝血しており、剥離面を示していた。そして、出産直後は三〇〇cc程度の出血であったが、その後弛緩性出血がみられた。被告が、出血を止めるために子宮内清掃を行ったところ、原告XCの子宮は、胎盤早期剥離を起こしやすいハート型をしていることが判明した。結局、総量で一六〇〇cc程度の出血があり、血圧が午後七時二〇分の時点で七四ないし五八と、母体が心配される状態であり、被告は、保存血のみならず新鮮血の輸血を行った。このような経過からすると、本件分娩において、胎盤早期一部剥離があったものである。
以上のとおり認められる。なお、弁論の全趣旨によると、〈書証番号略〉の分娩監視記録は、証拠保全時に提出されていないことが認められ、原告XCは、本人尋問において、分娩監視装置による継続的監視は受けていないと供述するが、〈証拠〉を総合すると、〈書証番号略〉の記録は、本件分娩の経過を四時五六分以降五時二九分まで記録したものとして、内容に不自然な点はなく、他の証拠との整合性を有するので、原告XC本人の分娩記録と認めるべきであり、右供述部分は信用しない。
また、原告XCは、その本人尋問において、酸素投与は受けていないと述ベるが、〈証拠〉によると、分娩監視当初存在した高度徐脈がいったんみられなくなったのは、XE看護婦の行った酸素投与によるものと考えるのが自然であるので、右供述部分は信用しない。
2 以上の分娩経過を踏まえて、被告及びその履行補助者であるXE看護婦のとった措置の是非を検討する。
(一) そこで、右検討の前提として、〈証拠〉によると、分娩について一般的に次のようにいわれていることが認められる。
(1) 分娩は、分娩開始から子宮口全開大(直径約一〇センチメートル)までの第一期、子宮口全開大から胎児娩出までの第二期、胎児娩出直後から胎盤娩出までの第三期に区分され、分娩第一期は、通常は危険が少なく、分娩第二期は危険が突発することが多い。
(2) 過強陣痛は、子宮収縮が異常に強く、産婦の苦痛が強い。そして産道の抵抗の少ないときは急産を招き、産道の抵抗が強いときは胎児仮死を招く。処置としては、児心音に注意しつつ厳重に経過を観察する必要がある。
(3) (常位)胎盤早期剥離は、正常位置に付着している胎盤が、妊娠中又は分娩経過中で胎児の娩出以前に、子宮壁より剥離するものをいう。妊娠中毒症によるものが多いが、必ずしもこれに限らない。胎盤の母体面には剥離部に凝血塊の付着を認める。症状としては、母体は腹部激痛、貧血等がみられ、分娩後に弛緩出血等異常出血をきたし易い。児心音は減弱、消失する。治療としては、急速遂娩術によりすみやかに胎児の娩出をはかり、分娩時の出血を極力防止し、急性貧血その他全身状態に対する治療を行う必要がある。
(4) 胎児の生命の危険は、分娩第二期においてもっとも起こり易い。胎児仮死は、胎児胎盤系における呼吸循環不全を主徴とする症候群をいい、これは胎児心拍数の異常となって現れる。したがって、できるだけ頻回に聴取ないし分娩監視装置により連続的に監視することが必要である。胎児の正常心拍数は一分間に一二○ないし一六〇である。心拍数の減少を徐脈といい、一〇〇以下のものを高度徐脈という。遅発一過性徐脈とは、陣痛の波形の立ち上がりよりも遅れて胎児心拍数が減少するものである。これは胎児仮死の徴候である。特に、心拍数基線に、健康な胎児の場合にみられる細変動が消失しているものは、危険である。
(5) 胎児仮死の徴候が見られた場合には、一般的に、まず産婦の体位変換、酸素投与を行って様子をみるのが、原則である。臍帯の軽度圧迫が原因のときは、通常これで回復するからである。しかし、このような手段によっても、状態が改善されない場合には、すみやかに(五分ないし一〇分以内に)、急速遂娩術をとり、胎児を低酸素状態から救出する必要がある。
(6) 急速遂娩術とは、妊娠中あるいは分娩中において、母児に危険が迫っている場合に、急速に分娩を終了させるために行う手術をいう。このうち、鉗子及び吸引ポンプで牽引する鉗子分娩及び吸引分娩は、子宮口が全開大で、破水していて、児頭が骨盤腔内に進入していること、児頭骨盤不均衡がないこと、などの条件が満たされている場合に行われる。児頭がまだ右位置にまで来ていない高い位置にある場合には、妊娠子宮を切開して人工的に胎児を娩出させる帝王切開術を行う。
(二) そこで検討するに、まず、原告らは、医師は出産に際し、常時病院内に待機すべき義務があると主張する。
産婦人科医師は、自己の病院に入院した産婦が安全に分娩できるように配慮する義務があることは当然のことであるが、被告が原告XCの出産当日、午後三時ころから外出して、一時、被告医院を不在にしたことをもって、直ちに医師としての産婦に対する配慮義務を怠った過失があるものということはできない。蓋し、産婦の陣痛が始まり分娩に至るまでの経過は、経験則上、産婦の個体差によっていろいろな進み方の分娩があると認められるので、医師といえども産婦がどのような進み方で、分娩にどの程度の時間がかかるかは事前に予測することが難しく、したがって産婦の分娩が始まるまで医師に対し常時病院内に待機することを義務付けることは酷であり、右の決定をすることは医師の専門的裁量の範囲内に属する事柄であると考えるからである。
前記二の1の(一)の認定によれば、原告XCが被告医院に午前一一時ころ入院して、被告が診察したところ、子宮口開大四センチメートルで陣痛間隔が五分であり、午後一時の診察では、子宮口開大五センチメートルで陣痛間隔が三分であり、その後、原告XCの状態に大きな変化がなく、ゆっくりとした分娩経過であることから、被告が原告XCの分娩が遷延していると判断して、外出先を看護婦に告げ、緊急用連絡ベルを携帯した上、一時、車で三〇ないし四〇分かかる〇〇病院内での講演会に出席のため外出したことをもって、被告の前記裁量の範囲を逸脱したものとすることはできない。
ただ、外出する場合にも、産婦が分娩中に急に難産の事態に立ち至ることが多いことも経験則上明らかなことであるから、その場合には直ちに帰院して対応措置をとることが可能なように時間的、場所的な考慮の上で外出すべきであるから、被告が車で三〇分ないし四〇分かかるような場所に外出して被告医院を医師不在にしたことは、被告の前記裁量的判断の範囲内とは言え、慎重を欠く行動であったと評価されても止むを得ないと考える。
(三) 次に、原告らは、原告XAは午後四時三〇分以降、、仮死状態に陥ったものであり、XE看護婦は、この時点で分娩監視装置を装着すべきであったと主張するが、原告XAが四時三〇分以降五時以前の段階で仮死状態に陥ったとは認めるに足りる証拠はなく、それを伺わせるような徴候も認められない。また、本件分娩当時、医師が入院した妊婦すべてに必ず分娩監視装置を装着すべきとの医学的常識又は医療水準にあったとも認めるに足りる証拠はない。したがって、破水以前は非連続的に、子宮口開大や陣痛の状況をみるのと併せて児心音の測定を行い、破水を契機として原告XCに分娩監視装置を装着したXE看護婦の措置には格別の問題はないと考える。
(四) 次に、胎児の原告XAが低酸素状態に陥った後の措置についてみると、分娩監視装置を開始した後のXE看護婦の措置については、高度徐脈を発見して、それに対して酸素吸入をして様子をみた措置は、とりあえず妥当なものと考えられる。
しかし、その後五時八分ころには、高度徐脈はいったんなくなったものの、総合すると依然として胎児仮死の徴候は示し、五時二〇分ころには再び高度徐脈を示しているのであるから、その後自然分娩に任せ、五時五二分の娩出まで原告XAを低酸素状態においたのは、適当ではなく、やはり急速遂娩術をとるべきであったと考える。急速遂娩術を開始すベき時刻は、本件分娩の経緯に鑑みると五時二〇分とするのが相当である。この時は、前記認定のとおり、子宮口は全開大になっているから、鉗子又は吸引分娩を行うのが相当であったものと認められる。
しかるに、被告は、本件分娩において、原告XCの分娩まで時間があると判断して、車で三〇分ないし四〇分かかる場所へ外出し、その結果、午後四時五六分以降、原告XAが胎児仮死の危険を有する状態となったことが、被告の履行補助者であるXE看護婦によって発見され、午後五時以降のXE看護婦の措置によっても右状態が根本的に改善されず、急速遂娩術によって胎児仮死による低酸素状態から原告XAを早期に救出すべき義務が発生したにもかかわらず、右のとおり急速遂娩術に着手すべき五時二〇分の時点において、原告XCの側にいることができず、右急速遂娩術をとるべき義務を履行することができなかったので、被告には右過失があるものと考える。
三 被告の過失と損害の発生との因果関係について
1 〈証拠〉によると、以下の事実を認めることができる。
(一) 被告は、翌日の昭和五九年二月一六日、原告XAを千葉市立病院に転送した。原告XAは、右病院では、脳性麻痺と判断され、同年四月一三日まで入院して治療を受けた。
被告は、原告XAを転送してから数日経過した後、被告医院におけるカルテ全てを持参して千葉市立病院へ行き、右病院の岸本部長に出産の経過や症状を説明し、子宮の異常や弛緩性出血については述べたが、胎盤早期一部剥離、過強陣痛の事実や胎児仮死の事実については述ベなかった。千葉市立病院では、当初の原告XAの発熱、痙攣、肝脾腫の症状から、重症の感染症を疑って検査を行ったが、明確な結果は出なかった。結局、右病院の診断は、頭蓋内出血と、低酸素性脳損傷となった。右病院での担当医師丹羽淳子は、脳が低酸素に長期間さらされた結果頭蓋内出血が生じたのか、頭蓋内出血の結果脳が低酸素に侵される状態になったものと考えている。分娩の詳細がわかればいずれであるのか判断は可能である。そして、低酸素性脳損傷と頭蓋内出血のいずれも過強陣痛や胎盤一部早期剥離によって惹起される可能性がある。
(二) 原告XAは、〇〇療養所(現〇〇病院)に、昭和五九年四月から七月までと、同年一〇月から昭和六二年八月までの二回入院した。
ここでの診断は、脳に血が行かないために脳細胞が壊れて柔らかくなり、また孔が開いて蜂の巣のようになった状態である多房性脳軟化症とされ、その原因は、低酸素症が最も考えられること、これを防止するためには、胎児心拍数を監視して、胎児仮死状態が発生したら、急速遂娩術によって胎児をできるだけ早く低酸素状態から救出することが必要であるとされている。
担当医の須貝研司医師は、先天的な異常は確率的には少ないと考え、分娩の時の低酸素状態によるのではないかと推定している。
現在、原告XAは、大脳のほとんどは破壊され、脳幹も相当異常になっているため、重度の精神障害、運動障害を有し、呼吸障害や体温調節障害もあり、日常生活全てにわたり介助を必要とし、回復の可能性はない。そして、脳性麻痺(身体障害者の診断の指定病名)による四肢体幹機能障害として、身体障害者等級表の一級に認定されている。
(三) 以上のとおり、本件において原告XAが仮死状態となり、低酸素状態に陥った原因として考えられる主なものは、過強陣痛、胎盤早期一部剥離である。
2 右1認定の各事実からすると、原告XAの現在の脳性麻痺(正確には前記のとおり多房性脳軟化症である。)の原因は、過強陣痛や胎盤早期一部剥離により引き起こされた胎児仮死に基づく低酸素状態に置かれたことであると認めることができる。また、本件分娩経過において、被告に急速遂娩術をとるべき義務の発生した時刻は、前記のとおり五時二○分の段階である。
そこで、右時点において急速遂娩術によりすみやかに低酸素状態から救出され、その後なお約三〇分にわたり低酸素状態にさらされることがなければ、原告XAは、右症状にならずにすんだものであると推認するのが相当である。
したがって、被告の過失と結果発生との間には因果関係があるものと認める。
3 なお、被告は、本件の胎児仮死は、過強陣痛、胎盤早期一部剥離等の複合により生じたものであり、被告が在院していても結果発生は回避できなかった旨主張するが、本件胎児仮死の原因として、過強陣痛、胎盤早期一部剥離が存在することは認められるが、原因が何であれ、その結果である胎児仮死若しくは低酸素状態から胎児を救出する必要があり、そしてその手段としては急速遂娩術をとるべきであり、急速遂娩術を行っていれば結果を回避できたことは、前記認定のとおりであり、被告の主張は失当である。
4 結局、被告は前記過失により原告XAに重篤の身体障害を与えたものであるから、原告XA及び両親の原告XB、同XCに対し、民法七〇九条、七一〇条による損害賠償義務がある。
四 損害額について
(原告XA分)
1 入院及び自宅療養諸経費
(一) 弁論終結までの分
(1) 〈証拠〉によると、原告XAは、自力でミルクが飲めないので、イルリガードルと鼻腔栄養チューブで飲ませてやる必要があり、イルリガードル、鼻腔栄養チューブは、各自使い捨てで、それぞれが一本三二〇円及び一四〇円であること(したがって、以上の経費は一日四回飲ませるとして一八四〇円となる。)、原告XAは排泄のコントロールができないので、紙おむつをあてており、これを一日六、七回取り替えること、紙おむつは四八枚入りで二七〇〇円であること(したがって、一日で六回取り替えるとして三三七円かかることになる。)、原告XAは、呼吸能力が弱く、痰等をのどにつまらせるので、それを取り除くための吸引器を購入したほか、痰を出しやすく柔らかくしたり、呼吸をしやすいように気管拡張剤を使用するための吸入器及び空気を清浄にする空気清浄器を購入したほか、体温調節が自分でできないので、外部温度で調節する必要があり、そのためにエアコンと赤外線ヒーターも購入し、エアコン使用による空気の乾燥を和らげるために加湿器を購入したので、これらの電機器具を使用することによって、電気代は、一月につき一万円、一日につき三三三円(円未満は四捨五入、以下同じ)多くなったことが認められる。
(2) したがって、以上の一日あたりの諸費用の合計は、二五一〇円であるので、原告XAが現在(弁論終結時)までに在宅治療をした期間〈証拠〉を総合すると、昭和五九年七月から九月まで、同六二年九月から同三年一月二四日まで、同年三月一二日から平成元年一一月二九日までと認める。)についてこれが必要であり、その合計額は、二一七万三六六〇円(二五一〇円×八六六)である。
(3) さらに原告XAが現在(弁論終結時)までに入院治療をした期間(右の各証拠を総合すると、昭和五九年二月一五日から同年六月三〇日まで、同年一〇月一日から同六二年八月三一日まで、同六三年一月二五日から同年三月一一日までと認める。)における入院諸雑費は、原告XAが零歳から四歳までの比較的諸経費を要しない年齢であったことを考慮し、一日当たりの諸経費を五〇〇円とみて、その合計額は、五九万三〇〇〇円(五〇〇円×一一八六)である。以上が本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。
(二) 将来分
(1) 弁論終結時からの将来にわたる原告XAの在宅及び入院治療のための諸経費としては、弁論の全趣旨によって一年のうち一〇か月が在宅治療、二か月が入院治療の見込みであることが認められるので、向後の一〇年間に限り(この点については後述する。)、在宅治療においては従前のとおり一日当たり二五一〇円、入院治療については一日当たり一〇〇〇円の経費を要するものとして算定するのが相当である。-
(2) そうすると、以上の合計額についてライプニッツ方式により中間利息を控除して計算すると、六三六万四九三六円〔(二五一〇円×三六五×一〇/一二+一〇〇〇円×三六五×二/一二)×七・七二一七〕となる。
2 付添看護及び介護料
〈証拠〉によれば、原告XAは、生活全般にわたり全面介護を必要とし、現在までは、両親である原告のXB及びXCが行ってきたが、今後とも続けるのは、肉体的精神的に限界があるので、職業的付添人を頼む必要があると認められる。
ところで、近親者付添人の介護料は、昭和五九年は一日三五〇〇円、同六〇年は三七〇〇円、同六一年は四〇〇〇円、同六二年は四〇〇〇円、同六三年は四五○〇円、同六四年(平成元年)は四五〇○円、平成二年は四五〇〇円である。また、職業的付添人の介護料は六八〇〇円(〈証拠〉)である。
(一) 弁論終結時までの介護料
したがって、弁論終結時までの介護料は、(1)昭和五九年分(二月一五日出生)一一二万三五〇〇円(三五〇〇円×三二一)、(2)同六〇年分一三五万〇五〇〇円(三七〇〇円×三六五)、(3)同六一年分一四六万円(四〇〇〇円x三六五)、(4)同六二年分一六四万二五〇〇円(四五〇○円X三六五)、(5)同六三年分一六四万七〇〇〇円(四五〇〇円×三六六)、(6)平成元年分(一一月二九日弁論終結)一四九万八五〇〇円(四五〇〇円×三三三×以上の合計八七二万二〇〇〇円となる。
(二) 弁論終結後の介護料
介護料の将来分については、原告XAの前記症状に鑑みると、原告ら主張のとおり健康な男子の平均余命の全部について介護料を認めることは問題であるので、原告XAの主治医である証人須貝研司の証言に照らし、弁論終結時(平成元年一一月二九日)から約一〇年間の平成一二年三月三一日までとするのが相当と認める。
右の認定を前提として、将来の職業的付添人による介護料をライプニッツ方式によって中間利息を控除して計算すると、一九一六万五二五九円(六八〇〇円×三六五×七・七二一七)となる。
3 逸失利益
前記認定事実から、原告XAの労働能力喪失率は一〇〇パーセントであるとみるのが相当である。そこで、その逸失利益は、原告XAが本件障害を負わなければ昭和五九年賃金センサス産業計全労働者平均賃金三四八万〇六〇〇円で四九年間就労可能であると認められるので、ライプニッツ方式により中間利息を控除して計算すると、二六二七万五〇四九円(三四八万○六〇〇円×七・五四九)となる。
ところで、前記のような症状にある者は通常の健康人に必要とされる生活費の支出を免れるので、原告XAの逸失利益を算定するに当たっては、前記の就労可能期間中を通じて、四割の生活費を控除すべきである。
そうすると、逸失利益は一五七六万五〇二九円となる。
4 慰謝料
前記のとおりの原告XAがその分娩後に受けた精神的苦痛を慰謝するには、原告XAの後遺障害の程度、入院治療、在宅治療、その他本件にあらわれた一切の事情を考慮に入れて、一八〇〇万円をもって相当と認める。
5 弁護士費用
原告XAが、法定代理人親権者である原告のXB、XCを通じて本件訴訟を訴訟代理人である弁護人に委任したことは、弁論の全趣旨により認められる。そして、本件事案の難易、訴訟の経過、認容額等を考慮すると、弁護士費用のうち七〇〇万円が、本件と相当因果関係を有する損害と認める。
(原告XB及び同XC分)
1 慰謝料
原告XAの両親である原告XB及び同XCが本件で受けた精神的苦痛は、想像に余りがあると認めるので、それを慰謝するには、原告XBについて四〇〇万円、原告XCについて六〇〇万円をそれぞれ相当と認める。
2 弁護士費用
右原告らが本件訴訟を訴訟代理人である弁護士に委任した弁護士費用のうち本件と相当因果関係を有する損害は、右原告らの認容額、右原告らの訴訟追行は原告XAの訴訟追行に従たる関係にある等の事情を考慮すると、原告XBについて四〇万円、原告XCについて六〇万円が相当であると認める。
(合計額)
以上のとおり、原告XAが七七七八万三八八四円、原告XBが四四〇万円、原告XCが六六〇万円となる。
五 結論
よって、原告らの請求は、原告XAが七七七八万三八八四円、原告XBが四四○万円、原告XCが六六〇万円及びこれらに対する不法行為の日の翌日である昭和五九年二月一六日から各支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。