小腸絞扼性イレウスを発症して穿孔し,汎発性化膿性腹膜炎に罹患して敗血症により死亡した事例
福岡地裁久留米支部 平成27年9月4日判決
事件番号 平成24年(ワ)第157号、同27年(ワ)第27号
本件は,原告の妻である亡患者が,被告社会医療法人の経営する病院(以下「被告病院」という。)を受診して入院,小腸絞扼性イレウスを発症して穿孔し,汎発性化膿性腹膜炎に罹患して敗血症により死亡したことについて,①原告は,被告病院に勤務する医師である被告Y2(主治医),被告Y3(当直医)及び被告Y4(執刀医)(以下「被告医師ら」という。)が共謀の上,故意に患者を死亡させたと主張して,被告医師らに対しては不法行為に基づき,被告病院に対しては債務不履行又は使用者責任に基づき,患者が被告らに対して取得した損害賠償請求権を原告が単独相続したなどとして損害賠償を請求し,②亡患者の他の相続人又はその相続人である参加人らは,被告医師らが過失により患者を死亡させたと主張して,被告医師らに対しては債務不履行又は不法行為に基づき,被告病院に対しては使用者責任に基づき,損害賠償を請求するとともに,原告に対し,参加人らが上記各損害賠償請求権を有することの確認を求めた事案である。
裁判所は,被告Y2には,亡患者が絞扼性イレウスである疑いが強いことを認識し得,これを疑うべき注意義務があったのにこれを看過した過失があり,その過失と患者の死亡との間に因果関係が認められるとし,被告Y3には,被告Y2が来棟するまで漫然と経過観察を続けた過失があるとし,その過失がなければ患者を救命することができたといえるほどの高度の蓋然性を認めることはできないが,患者死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性を侵害したとしたが,被告医師らの故意や共謀を認めるまでの証拠又は事実は認められないとした。
そして,患者の有する損害賠償請求権を各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継した原告及び参加人に対して,被告ら(被告Y4を除く)に,逸失利益,死亡慰謝料等相当額の支払いを命じ,参加人らの原告に対する確認の訴えはこれを却下した。