脳出血の手術を受け術後管理中,医師の過失で重篤な後遺症が残ったとして損害賠償を求めた事例
神戸地裁 平成25年4月18日判決
事件番号 平成21年(ワ)第4197号
本件は,被告病院において脳出血の手術を受けた原告A及びその妻である原告Bが,上記手術の術後管理中,経腸栄養用の経鼻胃管を気管に誤って挿入するという被告病院の医師の過失によって原告Aが膿胸を発症した上,急性期及び回復期のリハビリが不十分なものになったため,胸腹部臓器の機能の著しい障害,咀嚼及び言語の機能の著しい障害,神経系統の機能又は精神に著しい障害が残り,終身労働に服することができず,常時介護を要する状態になったとして,被告病院の業務に関する権利義務を承継した被告(地方独立行政法人)に対して,原告Aは,不法行為又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき,原告Bは,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,本件過失がなかったとしても,原告Aに現在見られるような言語障害,嚥下障害及び運動機能障害等が残らなかったとまでは直ちに認め難いとしたが,本件過失がなければ,原告Aに現在のようなベッド上生活を強いられる重篤な後遺症が残らなかった相当程度の可能性があったと認めるのが相当であり,被告は,本件過失によって,原告Aの上記可能性を侵害したものと認められるから,これを侵害されたことによって原告Aに生じた損害を賠償すべき不法行為責任を負うというべきであるとして,原告Aには慰謝料等相当額を認め,原告Bの請求は理由がないとしてこれを棄却した。