左聴神経腫瘍の摘出手術を受けた際,椎骨動脈を損傷され,ふらつき,めまい等の後遺症を負ったとして損害賠償を求めた事例
東京地裁 平成30年2月26日判決
事件番号 平成27年(ワ)第26800号
本件は,被告の開設する病院(被告病院)において左聴神経腫瘍の摘出手術を受けた原告(患者)が,手術の際,椎骨動脈を損傷され,ふらつき,めまい等の後遺症を負ったと主張して,被告に対し,診療契約上の債務不履行に基づき,損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,争点となった椎骨動脈損傷に関する過失の有無について,本件手術前に血管撮影を行うべき義務があったとはいえず,開頭前の筋層剥離を担当した医師においては,椎骨動脈の走行と後頭骨及び第一頸椎との解剖学的な位置関係や,椎骨動脈と後頸部及び後頭の筋群との解剖学的な位置関係を十分理解していたものと推認され,また同医師には,ドップラーや超音波エコーを用いて椎骨動脈の走行を確認すべき注意義務があったとはいえないし,本件椎骨動脈の損傷を生じさせた切開の際に電気メスを使用したことが注意義務違反に該当するとは認められないとして,原告の請求を棄却した。