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腰部痛を訴える患者に対し、医師の診察を受け帰宅した後、腹部大動脈瘤破裂により死亡した事案。医師の不十分な問診,大動脈瘤破裂を疑ってCT検査を行わなかった医師の過失を認め,損害賠償請求を容認

広島高裁 平成30年2月16日判決 事件番号 平成28年(ネ)第143号 主   文  1 原判決を次のとおり変更する。  2 被控訴人は,控訴人X1に対し,1645万4832円及びこれに対する平成23年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  3 被控訴人は,控訴人X2及び同X3に対し,それぞれ822万7416円及びこれに対する平成23年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  4 控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。  5 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を控訴人らの負担とし,その余を被控訴人の負担とする。  6 この判決は,第2項及び第3項に限り,仮に執行することができる。        事実及び理由 第1 請求  1 原判決を取り消す。  2 被控訴人は,控訴人X1に対し,2873万1980円及びこれに対する平成23年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  3 被控訴人は,控訴人X2及び同X3に対し,それぞれ1706万5990円及びこれに対する平成23年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  4 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要  1 要旨    亡A(以下「亡A」という。)は,平成23年11月7日(以下,月日のみを示すときは平成23年を表す。)の午前中,被控訴人の設置する□□医療センター(以下「被控訴人病院」という。)を受診し,同病院のB医師(以下「B医師」という。)による診察を受けて帰宅した後,救急車で搬送され,同日午後11時50分頃死亡した。その直接死因は,腹部大動脈瘤破裂であった。    本件は,亡Aの相続人である控訴人らが,B医師には,腰背部痛を訴える亡Aの診察において,十分な問診を行わず,腰背部痛の鑑別に必要な検査を行わなかった過失があり,これにより上記診察の時点で腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂の状態にあった亡Aは救命のために必要不可欠な緊急手術を受けられずに死亡した旨を主張して,被控訴人に対し,診療契約の債務不履行又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求として,亡Aの妻である控訴人X1において2873万1980円及びこれに対する上記不法行為と主張する日である平成23年11月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,亡Aの子である控訴人X2及び同X3においてそれぞれ1706万5990円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払を求めた事案である。  2 原審の判断と不服申立て    原審は,亡Aに対する診察の時点において,同人の腹部大動脈瘤が破裂又は切迫破裂の状態であったとは認められないなどとして,控訴人らの請求を全部棄却した。    そこで,控訴人らが本件各控訴を提起した。  3 前提事実,争点及びこれに対する当事者の主張は,次のとおり補正し,後記4のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは,原判決の第2の2,3にそれぞれ記載のとおりであるから,これらを引用する。   (1) 原判決8頁25行日の「腹部大動脈瘤」の次に「の破裂又は切迫破裂」を加える。   (2) 原判決13頁24行目の「尿路感染」の次に「症」を加える。   (3) 原判決14頁2行目の「腎盂炎」を「腎盂腎炎」に改める。  4 当審における争点1に関する当事者の補充主張   (1) 控訴人らの主張    ア 本件診察時における亡Aの腹部大動脈瘤の状態について     (ア) 腹部大動脈瘤それ自体は無症状であるが,痛みを伴う場合は,破裂(血腫による他組織の圧排症状)又は切迫破裂(血管壁皮膜の破綻による炎症反応)として扱うとするのが医学上の常識的見解である。       本件において,亡Aの腰背部痛の発症様式が急性発症であったこと(発症時刻も特定することができている。),性状が安静時痛であったこと,亡Aにおいて腰背部痛を主訴として被控訴人病院の救急部を受診したことから推認されるとおりその痛みは激しいものであったことからすると,腰背部痛の原因は腹部大動脈瘤の破裂または切迫破裂にあったというべきである。     (イ) 11月7日朝の収縮期血圧が70~80mmHg台であったことは,この時点で出血が生じていたためであると考えるのが合理的である。       なお,亡Aは座って血圧を測定したと考えるのが自然であり,そうすると,上記血圧が70~80mmHg台であったことを起立性低血圧によると説明することは不可能である。     (ウ) 亡Aが11月7日朝に嘔吐したのは,腹部大動脈瘤が破裂して後腹膜腔に出血すると,後腹膜腔にこれまで存在しなかった血腫が突然生じ,これによりその部位の腸が圧迫され,腸全体にその影響が及んだ結果,十二指腸が押し上げられ,嘔吐が誘発されたことによる。     (エ) 上記(ア)のとおり腰背部痛は腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂によると考えられる。そして,双方の可能性を比較すると,上記(イ)の低血圧及び上記(ウ)の嘔吐の各事実から,既に破裂していたと考えるのがより合理的である。       なお,被控訴人病院において亡Aの血圧及び脈拍は回復していた。この回復は,腹部大動脈瘤が破裂していた場合でも,破裂様式が後腹膜腔に破裂したクローズド・ラプチャーであり,タンポナーデ効果(血腫により破裂部位が塞がれること)により出血が止まったこと,生体維持反応としての代償機構が機能して細胞外液の血管内移動が生じたことなどにより,説明することが可能である。    イ B医師の過失について     (ア) 腰痛の診療において,命にかかわる重篤な疾患を除外することが重要であり,その代表的なものが大動脈疾患である。       そして,亡Aの主訴は腰背部痛であったから,B医師は,腰背部痛を中心に,発症様式,痛みの性状及び増悪・緩和因子,随伴症状等を掘り下げて問診すべきであった。そうすることにより,亡Aの腰背部痛が急性発症の安静時痛で,しかも救急部を受診する程度の激しい痛みであること,さらに随伴症状としての血圧低下及び嘔吐があることを認識することができた。そして,この認識に基づき,第一に鑑別すべき内臓由来の疾患であるとの疑いを強め,結果,CTを実施することにより,腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂の診断に至ることが可能であった。     (イ) にもかかわらず,B医師は,大動脈疾患による腰背部痛の可能性を想定せず,これを確認するため,発症様式,痛みの性状及び増悪・緩和因子,随伴症状を掘り下げての問診を行わず,大動脈疾患か否かを判断するのに必須のCTを実施しないまま,軽率にも筋骨格系の腰痛と判断したのであるから,B医師に注意義務違反があることは明らかである。   (2) 被控訴人の主張    ア 本件診察時における亡Aの腹部大動脈瘤の状態について     (ア) 亡Aは,11月7日朝,急な腰痛,血圧低下及び嘔吐の症状はいずれもなかったのであり,被控訴人病院においても,救急部では,まず嘔吐及び手足のしびれを訴え,腰痛については以前から存在したと説明し,これが激痛である旨の訴えはなかった。亡Aは,苦悶様の表情,冷汗等を見せることなく,ベッドと車椅子との間の移動も自力で行っていた。バイタルサインも正常であり,緊急性を示したものはなかった。       その後の神経内科における本件診察の際にも,B医師に対し,急な腰痛であるとの申告はされず,亡Aに苦悶様の表情もなくB医師から見ても急激な腰痛と捉えられる症状は存在しなかった。B医師は,亡Aの訴えの強い順又は重要と考えた順に従い,カルテに,不眠,頭部全体の痛み,腰痛,気分不良,右腰背部痛と記載した。     (イ)a 腹部大動脈瘤破裂による血圧低下は,出血性ショックの状態と考えられる。亡Aの体重からすると,約1500mlの出血で上記状態となる。1500mlもの出血が生じた場合,循環血液量を増加させる代償機構によっては回復せず,血液が補充されなければ小康状態を保つにすぎない。また,循環血液量が不足した場合,1回の拍出量の減少を補うため,頻脈となる。これらは,出血性ショック時には必発である。        しかし,亡Aの11月7日午前10時20分の血圧は,収縮期115mmHg,拡張期69mmHg,脈拍は1分間に50回であり,いずれも正常であったのであり,出血性ショック後の経過と明らかに矛盾する。また,細胞内液の血管内移動が生じたとすれば,乏尿や顔面蒼白となるが,被控訴人病院で亡Aは排尿したし,顔面蒼白でもなかった。      b 腹部大動脈瘤が後腹膜腔に破裂した症例の場合,血腫・周囲組織の圧迫や血圧低下から一時的に止血状態となり得るが,非常に不安定で,短時間で再出血を来す。11月7日朝に破裂して不安定な止血状態になったとしたら,その状態が同日夜に救急搬送されるまで続いたとは考えられない。        また,亡Aは,強力な抗血小板薬プラビックスを服用していたから,そもそも一時的な止血状態が得られない可能性も高い。      c 腹部大動脈瘤破裂時の腹部腰部痛は,神経性疼痛が主体であり,腰痛のみが顕著になることはない。亡Aの場合は,右側壁に破裂孔があることから,腹部症状が強く出現すると考えられ,これは血腫による一時止血状態では緩和されない。        また,腹部大動脈瘤に起因する神経性疼痛と血腫の圧迫により,腹膜刺激症状である筋性防御や腹部膨満が必発であるが,診察所見では,腹部は平坦で柔らかく,圧痛もなかったとされており,このことも腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂があったことと矛盾している。      d 亡Aにタンポナーデ効果が生じたとの客観的根拠はなく,推測の域を出ない。     (ウ) 嘔吐は,腹部大動脈瘤の破裂との関連性に乏しい。       血腫による腹膜内臓器の圧迫が嘔吐の原因であれば,血腫の圧迫が除去されない限り嘔吐が継続し,軽快しないはずである。     (エ) 亡Aには,腰椎L3/4に変形性脊椎症があるから,これが腰痛の原因であると説明することができる。    イ B医師に過失があるとはいえないこと     (ア) 亡Aは,被控訴人病院の救急部において緊急性が低いと判断された患者であり,主訴は,2週間続く不眠と頭部全体の痛み(ひいては脳梗塞再発の心配)であった。腰背部痛は補足的に述べた症状にすぎず,救急部の受診を希望した理由でもない。     (イ) B医師は,亡Aの主訴が腰痛でなかったこと,苦悶様の表情が見られなかったことから,新規の腰痛発症はなかったと判断し,重症度・緊急度を否定した。そして,尿路結石,尿路感染症等の尿路系疾患を否定し,腸閉塞,イレウス等の消化器症状がないことも確認し,最終的に整形外科的な筋骨格系の痛みであると判断した。このような診察ないし問診手順は,妥当な診療行為と判断される。       仮に控訴人らが主張するような問診を行ったとしても,上記アの所見からすると,腰痛の原因は整形外科的なものであるとの鑑別がされることとなり,CTは実施されず,同様の経過をたどったはずである。 第3 当裁判所の判断  1 判断の基礎となる事実    上記第2の3において引用した原判決の前提事実のほか,証拠(甲A3,A9,乙A13,A14,証人B,証人C,控訴人X1本人のほか,掲記したもの。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。   (1) 亡Aの診療歴等    ア 亡Aは,平成9年末頃から平成10年2月20日まで脳血栓で他院において入院治療を受けていたが,同年3月,椎骨脳底動脈循環不全症であり,抑うつ状態が疑われる患者として被控訴人病院を紹介され,神経内科及び神経科(精神科)での通院治療を受けるようになった。      亡Aは,平成17年以降,神経科治療薬のほか,頭痛時の痛み止めとして,ロキソニンの処方を受けていた。(甲A8の1・2,乙A9,A12)    イ 亡Aは,平成19年5月,被控訴人病院の耳鼻科を受診し,起立性低血圧の指摘を受けた。      また,亡Aは,平成19年11月,ぎっくり腰となったが,この腰の症状は,平成20年1月には軽快した。(甲A8の2・3)    ウ 亡Aは,平成21年10月28日,左下下肢の脱力を訴え,被控訴人病院の神経内科で脳梗塞との診断を受けて,同年11月10日まで入院治療を受けた。亡Aは,脳梗塞の後遺症として,左半身の片麻痺が生じた(甲A8の2・3)。    エ 亡Aは,被控訴人病院の神経内科及び神経科での通院治療を続けていたが,平成22年7月5日以降は,神経科において,うつ病及び脳梗塞の治療を受ける取扱いがされるようになった。      被控訴人病院の神経科において継続的に測定されていた亡Aの血圧は,平成23年以降,概ね,収縮期120mmHg以上,拡張期65mmHg以上であり,高いときには収縮期150mmHg,拡張期85mmHgを超えることもあった。また,亡Aは,自宅でも,購入した血圧計により血圧を測定していた。この血圧計は,手首に装着し,心臓の高さに合わせて測定するタイプのものであり,機器にも座って使用する例が示されている。      亡Aは,血圧を気にしており,普段から,座椅子に座り左手首に装着して計測していたほか,血液をさらさらにする作用のある薬(プラビックス)を服用していた。(甲A6,A8の2・3,乙A4,A13)    オ 亡Aは,上記イのぎっくり腰のほか,腰部の整形外科系の疾患による慢性的な痛みを訴えたことはなかった。   (2) 被控訴人病院の救急部へ向かうまでの亡Aの症状等    ア 亡Aは,11月7日,午前7時頃に起床し,朝食後(食べた量は明らかでない。),新聞を読んで朝飲む薬を服用したところ,右の腰背部痛が突然発生した。体を動かさないでいるときも痛む安静時痛であり,湿布を施したが,効果はなかった。      亡Aが苦しそうにしていたため,控訴人X1は,同日午前9時に予約していた歯医者に行くことを躊躇していたものの,亡Aが行くように勧めたことから,一度は自家用車で歯医者に出かけた。しかし,歯医者に到着していた控訴人X1に亡Aから電話が入り,被控訴人病院に行きたいので帰って来てほしいとの話がされた。そこで,控訴人X1は急いで帰宅し,亡Aが手配していたタクシーが到着するのを待ち,亡Aをタクシーに乗せて,被控訴人病院に向かった(普段は,控訴人X1が運転する自家用車で通院していた。)。なお,救急病院として,被控訴人病院よりも近くに△△病院が存在するが,亡A及び控訴人X1は,脳梗塞の再発を心配しており,かかりつけの被控訴人病院に行くことにした。(乙A1~A4,A8)    イ 亡Aは,タクシーに乗車中に連続して2回,胃液や唾液の混ざった物を口から吐き出した。食物残渣は含まれていなかった。      また,亡Aは,自宅を出るまでに血圧計で血圧を測ったところ,その収縮期血圧は70~80mmHg台であった。(乙A1~A3,A8)   (3) 被控訴人病院の救急部における対応    ア 亡A及び控訴人X1は,被控訴人病院の救急部に到着した。午前10時20分頃,亡Aは,被控訴人救急部の受付の床(2ないし3メートル先に待合室がある〔乙A16〕。)に座り込んでいたところを,被控訴人救急部の受付担当職員に発見され,同職員及び同人の連絡を受けて来たC看護師,D看護師及びE看護師により車椅子に乗せてもらった。    イ その後,救急部問診表への記入をD看護師が引き受け,同看護師は,亡A及び控訴人X1から症状等を聴取して,救急部問診表の[今日はどのようなことで受診されましたか」(『どのような症状ですか』『それはいつ頃からですか』)の記載欄に,「嘔吐-朝から・(手足がしびれる)-元々あり」,「BP70~80代だった」,「DrFかかっている」と記載した(乙A1,A8)。    ウ E看護師は,D看護師の指示を受け,亡Aを処置室内のトリアージブースに移動させて,同人のバイタルサインを測定した。同測定を行う前提として,E看護師は,救急部問診表の枠外上部に「元々・左手マヒ」と記載した。      E看護師は,亡Aのバイタルサインを測定し,その結果につき,体温36.5℃,拡張期血圧115mmHg,収縮期血圧69mmHg,酸素飽和度98%,脈拍1分間に50回と記載した。(乙A1,A8)    エ 亡Aは,バイタルサインを測定された後,しばらく車椅子に乗ったまま待合室で待機していた。控訴人X1は,亡Aが腰痛を訴えたことから,看護師に対して,亡Aをベッドに移動させるよう求め,これを受けて,D看護師は,亡Aを車椅子に乗せて救急部処置室内のベッドまで移動させた。      亡Aは,その後,D看護師に連れられてトイレに行った。ベッドから車椅子への移動は,控訴人X1も手伝った。    オ 亡Aのバイタルサインが測定された後,救急部問診表は被控訴人病院救急部のG医師(以下「G医師」という。)に渡された。      G医師は,救急部問診表を確認した上で,C看護師に対して,亡Aについて再トリアージをすること及びその結果に問題がなければ亡Aに一般外来を受診させることを指示した。(乙A1,A8)    カ(ア) G医師の指示を受けたC看護師は,ベッドの上に座る亡Aの下へ行き,亡A及びそのすぐ近くにいた控訴人X1から容態を聴取した。       亡A及び控訴人X1は,以前脳梗塞になったときに左手の震えの症状があったが,右手の震えがそのときのものと似ており,脳梗塞の再発が心配であること,腰痛があること,高血圧であることなどを話した。そこで,C看護師は,上記聴取の結果について,救急部問診表に,「右手ふるえた」,「腰痛(+)」,「高血圧」,「再梗塞への不安」と記載した。       また,C看護師は,亡A及び控訴人X1から,亡Aが被控訴人病院の耳鼻科のH医師にかかっていること,亡Aが仮声帯肥大,起立性低血圧と指摘された旨を話したことから,この旨を救急部問診表に記載した。       さらに,C看護師は,亡Aが,被控訴人病院の神経科のF医師にかかっていること及び11月30日に受診の予定があり,薬をもらうことになっていることを聴取し,この旨も救急部問診表に記載した。(乙A1,A8)     (イ) なお,C看護師は,「腰痛(+)」の記載につき,腰痛が以前からあったとの意味で記載した旨を供述する。       しかし,腰痛が以前から存在したことを示す趣旨の記載は救急部問診票上されていない上,亡Aは,一度ぎっくり腰となったほか,腰部の整形外科系の疾患に罹患して慢性的な痛みを訴えたことはなかったと認められることに照らして(上記(1)オ),上記供述は採用できない。    キ C看護師は,亡Aについて上記カ(ア)のとおり聴取し,待っている間の状態に変化がなかったことから,緊急性が低いと判断し,また,亡A及び控訴人X1も脳梗塞の再発の不安を述べたことから,亡Aに対して,神経内科の一般外来を受診することを提案し,その際,担当医がB医師であることを告げた。亡Aがこれを了承したことから,C看護師は,その旨をG医師に報告し,G医師から,亡Aについて神経内科の一般外来を受診させるとの指示を受けた。      そこで,C看護師は,車椅子で亡Aを内科の一般外来の待合室に移動させ,内科外来の看護師に対し,亡A及び控訴人X1が訴えた脳梗塞の再発の不安,救急部での亡Aのバイタルサインの測定結果及びそれまでの聴取内容について申し送りをし,救急部問診表を渡した。   (4) 被控訴人病院の神経内科における診療等    ア 亡Aは,11月7日午前10時54分頃,控訴人X1とともに,被控訴人病院の神経内科の一般外来の受付をし,控訴人X1は,神経内科問診表を以下のとおり記載するなどして作成し,同科の看護師に渡した(乙A4,A15)。     (ア) 「どのように具合が悪いですか。」の質問に対し,「痛い」,「動きが悪い」,「めまい」の選択肢に丸印を付し,「痛い」の選択肢の左横には「腰」と記載した。     (イ) 「いつ頃から具合が悪いですか。」の質問に対し,「その他」の選択肢(その余の選択肢は,「数日前から」,「1週間前から」,「1か月前から」の3つである。)の空欄の括弧内に「腰痛(+)」,「便秘気味」と記載し,「わかれば( 月 日 時頃)」の欄には「11」月「7」日「7」時頃と記載した。     (ウ) 「今まで大きな病気をしたことがありますか。」の質問に対し,空欄の括弧内に「脳梗塞」,その左側に「(アテローム型)」と記載し,「現在治療中の病気がありますか。」の質問に対しては,「脳梗塞」の選択肢に丸印を付し,「現在飲まれている薬がありますか。」との質問に対しては,「ある」に丸印を付け,薬名につき「プラビックス他」と記載した。    イ 11月7日午前11時頃から,以下のとおり,B医師による本件診察が行われた(乙A2~4)。     (ア) B医師は,本件診察に先立ち,神経内科問診表を確認した。また,看護師から,亡Aがいったん救急部で受付をした後に,それが取り消されて一般外来を受診することとなったという経緯を聞いていたが,その具体的な理由については聞いておらず,救急部問診表の確認もしなかった。     (イ) 問診      a B医師は,車椅子に乗ったまま診察室に入室した亡Aに対して,当日の症状がどのようなものであるかについて聴取するために,「本日はどうされましたか。」と質問をした。        この質問に対して,亡Aは,時系列順に,2週間前から不眠であり頭部全体に痛みがあること,この症状に対して,被控訴人病院の神経科のF医師から処方されたロキソニン及びデバスを飲んでいたこと,今朝もすっきりとせずに起床して新聞を読んで薬を飲んだら腰痛が発生して気分不良となったこと,腰痛に対して湿布を貼ったが効果がなかったこと,腰痛について具体的には右腰背部痛であること,救急部を受診したことを回答した。        そこで,B医師は,上記回答の内容をカルテに記載し,続けて,救急部を受診した際に発熱がなかったことのほか,亡Aのバイタルサイン(体温,血圧,酸素飽和度及び脈拍)を記載した。これらの数値はいずれも正常であり,異常値は含まれていなかった。      b さらに,B医師は,亡Aが腰背部痛を訴えていることを踏まえ,尿路結石,尿路感染症および腎盂腎炎等の尿路系の疾患を鑑別するために,亡Aの排尿について質問した。        亡Aは,排尿は普通であり,頻尿,残尿及び排尿痛がないと答えたことから,B医師はその旨をカルテに記載した。      c B医師は,亡Aに対し,腰背部痛につき外傷によるものであるか(外傷エピソードがあるか),安静時痛か体動時痛かについての問診をしなかった。また,亡Aが訴えた気分不良についても,その内容を具体的に聴取したことはなかった。     (ウ) 打診,聴診及び触診      a 問診の後,B医師は,腰背部痛につき尿路系の疾患を鑑別するために,亡Aの肋骨脊柱角を打診して叩打痛がないこと確認し,その旨をカルテに記載した。      b 次に,B医師は,腸閉塞,イレウス及び腹膜炎等の消化器系の疾患を鑑別するために,亡Aの腸管の蠕動音を聴診したところ,正常であったことから,その旨をカルテに記載した。さらに,B医師は,亡Aの腹部を押すなどして,腹壁の異常,腹部の硬化及び腹部の腫瘤の有無を確認したが,特に異常がみられなかったことから,その旨をカルテに記載した。     (エ) 神経学的診察       B医師は,脳梗塞を鑑別するために,亡Aの四肢の腱反射に亢進があるかを確認したところ,左側の腱反射が亢進していたことから,そのことを示す図をカルテに記載した。その際,右側には亢進がなかったので,B医師は,新しい脳梗塞の兆候はないものと判断した。     (オ) B医師は,以上の診察の結果,脳梗塞の可能性はほぼなく,腰背部痛は筋骨格系のものであり,バイタルサイン等に異常がなかったことから緊急性の疾患でもないと判断して,亡Aに対して,既に神経科から出されている鎮痛剤を服用し,湿布を貼ることにより様子をみること及び症状が続くようであれば翌日に被控訴人病院の神経科を受診することを指示して本件診察を終了し,亡Aを帰宅させた。   (5) 本件診察後の亡Aの症状等    ア 亡A及び控訴人X1は,11月7日午後0時30分頃に被控訴人病院を後にし,同日午後1時30分頃,帰宅した。      亡Aは,リンゴとバナナを少し食べ,きなこジュースを飲んだが,その後,二度,嘔吐した。    イ 亡Aは,11月7日午後11時過ぎ頃,嘔吐し,意識レベルが低下した。      控訴人X1は,亡Aの容態が急変したことから,同日午後11時45分頃,119番通報した。そして,同日午後11時53分頃には,救急車が亡Aの自宅に到着したが,そのときには亡Aは心肺停止状態にあった。亡Aは,被控訴人病院の救急部に搬送されたが,同月8日午前0時54分頃,死亡が確認された(死亡推定時刻は同月7日午後11時50分頃である。)。      亡Aの直接の死因は,腹部大動脈瘤破裂であった。(甲A2,乙A5,A7,A10)    ウ 死亡後に行われたCT検査による死亡時画像診断では,亡Aには腹部大動脈瘤破裂の所見がみられ,腹部大動脈瘤の最大径は55mmであった。      血腫は後腹膜腔に止まっており,クローズド・ラプチャーに該当する破裂様式であった。(甲A2,A4,B22,乙A10,A11,B6)      この腹部大動脈瘤は,その大きさから1日で生じたものではなく,7日午前にもほぼ同程度のものが存在していた(争いがない。)。    エ 亡Aについて作成された救急出場報告書の「救急事故概要」の欄には,「なお傷病者は,脳梗塞の治療のため7日の午前中にかかりつけの□□医療センターを受診したもの。」との記載がされた(乙A7)。      他方,救急部看護記録には「11/7午前中嘔気と腰背部痛にてER受診するも内科外来へ行ってもらう」と記載がされた(乙A5)。  2 医学的知見    証拠(甲B22,B27,B28,B35,B38,乙B6,証人Iのほか,掲記したもの。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の医学的知見が認められる。   (1) 腰痛    ア(ア) 腰痛は,筋骨格系に由来し対症療法で対応可能な症例が大半であるが,内科的疾患を原因とし緊急処置が必要となる症例の場合もあるから,緊急度が高い疾患や内臓に由来する疾患を鑑別することが大切である(内臓に由来する疾患が除外されれば,筋骨格系が原因の腰痛であると考えられ,整形外科領域の鑑別診断を進めることになる。)(甲B1,B2,B23,B24,B34)。     (イ)a 緊急度が高い疾患や命にかかわる疾患として注意すべき疾患に,①大動脈疾患,②炎症性疾患(感染症,化学性炎症),③神経症状(下肢の筋力低下,知覚障害など)を呈するもの,④悪性腫瘍がある(今日の救急治療指針第2版〔甲B1〕)。      b 今日の救急治療指針第2版(甲B1)と同様に,腰痛に関し,① 見逃してはならない生命にかかわる疾患として,腹部大動脈瘤の破裂,解離性大動脈瘤等の血管疾患や子宮外妊娠を挙げる文献(甲B24),② 見逃すとまずい疾患として,大動脈瘤破裂,大動脈解離,悪性腫瘍及び化膿性脊椎炎等を挙げる文献(甲B30)がある。    イ 突然腰痛を発症した場合,血管や消化器等の臓器が詰まった(尿路結石等),破れた(大動脈瘤破裂),裂けた(大動脈解離),捻れた(S状結腸捻転等)病態をまず考える(これに対し,徐々に痛くなった場合は,腰部脊柱管狭窄症等の変性疾患,悪性腫瘍等を疑う。)。また,内臓に由来する腰痛の場合には,安静時にも痛み,姿勢や体の動きによる増悪がない(これに対し,退行性疾患による疼痛は,動作や姿勢によって疼痛が変化する。)。      よって,緊急性の高い疾患,内臓に由来する疾患を見逃さないため,外傷・発熱の有無,既往症(免疫抑制状態,悪性腫瘍等)のほか,急激な症状の出現(発症様式),安静時痛の有無を聴取する必要がある。そして,随伴する症状をも聴取し,患者が重大疾患をもつ可能性を吟味して必要な検査を行うことが重要である。歩けるから大丈夫であるとはいえない。(甲B1,B23,B24,B30,B34)   (2) 腹部大動脈瘤の破裂と腰痛との関係等    ア 腹部大動脈瘤の破裂・切迫破裂     (ア) 腹部大動脈瘤       大動脈の一部の壁が全周性又は局所性に(径)拡大又は突出した状態であり,大動脈壁の一部が局所的に拡張して瘤を形成する場合又は直径が正常径の1.5倍(腹部で30mm)を超えて拡大した場合に「瘤」と称し,腹部大動脈に生じた瘤を腹部大動脈瘤という。大きくなればなるほど,壁張力が増加し,破裂する可能性が増大する。       多くの場合に無症状であり,腹部の拍動性腫瘤で発見されることが多い。超音波検査,CT及びMRIの画像診断により瘤の存在を確定することができる。(甲B3,B4)     (イ) 腹部大動脈瘤の破裂      a 破裂の臨床的三徴は,急性発症の腹痛・腰痛,ショック及び腹部の拍動性腫瘤である。上記三徴があるときは,緊急に手術を行う。なお,ショックとは,急激に生じた末梢循環不全であり,末梢の諸臓器や組織が必要とする血流が得られないために細胞自体が障害を受け,機能不全を来す重篤な病態をいう。生体には,循環血液量減少,心機能低下及び末梢血管異常等に対して本来代償機構が備わっているが,この状態が破綻し,組織灌流が保持されなくなるとショックになる(甲B36)。        ただし,上記三徴を認めるものは,3分の1から半数程度であり,多くの症例では,大動脈瘤の破裂様式(方向)と程度により,症状や経過は異なるものとなる。腰痛は高頻度に見られる症状であるが,初発症状が腰痛のみの症例はそれほど多くはないとする報告がある。(甲B4,B5,B26)        腹部大動脈瘤の破裂が疑われる場合で,患者の状態から多少の時間的余裕があるときは,造影CTが有用であり,直ちに実施すべきである(甲B3,B8,B30)。単純CTでも確認することは可能である。      b 腹部大動脈瘤の破裂様式は,① 動脈瘤の前壁が破綻し,腹腔内に出血するタイプ(オープン・ラプチャー),② 動脈瘤壁の一部が破綻し後腹膜腔内に出血し,血腫により破裂孔が一時的に圧迫被覆され出血が止まるタイプ(クローズド・ラプチャー),③ 破裂によって生じた血腫により破裂部が完全に覆われたタイプ(コンテインド・ラプチャー)等がある。        通常,腹腔内への破裂(オープン・ラプチャー)では出血性ショック死となるが,後腹膜腔へ破裂した場合(クローズド・ラプチャー)は,血腫によるタンポナーデ効果(甲B42)により生存来院する症例も少なくない(腹部大動脈瘤の閉鎖性破裂〔クローズド・ラプチャー〕の症例につき,① 前日に急性腰痛症のような腰痛が生じ,この時点で腹部大動脈瘤切迫破裂又は後腹膜腔への破裂が生じていたと思われる,② 通常,腹腔内への破裂では突然死など救命困難な症例が多いが,後腹膜腔に破裂した場合は,タンポナーデ効果により生存来院する症例も少なくないとの報告がある〔甲B5〕)。(甲B13,B15,B19)     (ウ) 腹部大動脈瘤の切迫破裂       上記(ア)のとおり腹部大動脈瘤は多くの場合は無症状であるが,大きくなると,圧迫症状や動脈瘤の部位に一致した鈍い痛みを訴えることがある。さらに大きくなると,上腹部の不快感,食後の膨満感がみられることもある。       動脈瘤の破裂が近くなると,動脈瘤の部位に強い痛みが現れ,動脈瘤も急に大きくなる傾向がある。腰痛や背部痛が次第に強まり,持続的となって耐え難いものとなる。このような状態が切迫破裂であり,やがて動脈瘤が破裂し,血液が血管外に漏れ出し,血圧低下や重篤なショックに移行する。緊急手術が必要である。(甲B4,B6)       CTを実施することにより,切迫破裂瘤を確認することができる。    イ 腰痛との関係     (ア) 内臓由来の腰痛の原因として想定すべき腹部大動脈瘤の破裂は,失血死をすることがあるから,原因を鑑別する上で,最も緊急性が高い疾患の一つである。       急な腰痛により発症した場合は,腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂の可能性があり,大量に出血すれば短時間で重篤なショック,ひいては心停止に移行する。       急激な強い腰痛のほか,重篤感,ショック,異常高血圧及び四肢の血圧較差等を認めれば,腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂を疑う。(甲B1)     (イ) 上記ア(イ)aのとおり,腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂において腰痛のみの訴えのことがある。外傷エピソードのない急激な発症の腰痛,殊に「何時何分の発症」と患者が正確な発症時間を特定できる激痛をみたら,まずこの疾患を念頭に置く。(甲B1,B20,B23,B24,B30)。    ウ 嘔気・嘔吐との関係      嘔気・嘔吐の原因は様々であり特異性の低い症状であるため,随伴症状の有無及び組合せに注目し,診断の手がかりとする。      腰痛・背部痛に嘔気・嘔吐が加わった場合,尿路結石や腎盂腎炎のほか,腹部大動脈瘤の切迫破裂も想定する必要があり(ある公立病院内で実施された,入院中の症状・症候に関する看護師を対象とするフィジカルアセスメント〔嘔気・嘔吐+背部・腰部痛→〈  〉〕の解説を紙上再録した記事の記載である〔甲B7〕。),高齢者の腰背部痛(特に高血圧,喫煙歴のある男性)では,尿路結石と診断する前に,腹部大動脈瘤破裂の可能性を考える(甲B30)。      腹部大動脈瘤破裂の症例報告において,嘔吐の随伴症状が存在した事例が次のとおり報告されている。     (ア) 主訴が突然の右腰部痛及び嘔吐で,血圧は収縮期180mmHg,拡張期90mmHg,後腹膜腔に血腫を伴う腹部大動脈瘤の破裂が存在した症例(甲B9)     (イ) 嘔吐を伴う突然の右腸骨部痛を自覚したが,意識は清明で,血圧は収縮期114mmHg,拡張期64mmHg,脈拍は1分間に126回,腹部大動脈瘤及び後腹膜血腫が認められた症例(甲B10)     (ウ) 主訴が突然の腹痛,腰痛,下痢及び嘔吐で,血圧は収縮期100mmHg,拡張期62mmHgであり,腹部大動脈瘤の周囲後腹膜腔に多量の血腫が認められたが,腹腔内出血は認められなかった症例(甲B11)     (エ) 主訴が腹痛で,悪心,嘔吐及び腹痛等を来し,血圧は収縮期180mmHg,拡張期110mmHg,脈拍は1分間に110回であり,腹部大動脈瘤及び後腹膜血腫が認められた症例(甲B12)   (3) 出血,低血圧と代償機構等    ア 出血により,血液量が減少し,低血圧となる(甲B41)。    イ 人体には,血圧の変動に対し,その変動を小さくするように,全身血管の容量,心筋収縮力,心拍数及び動脈血管抵抗を制御し,心臓のポンプ作用等を介して心拍出量(1回拍出量と心拍数の積数)を調整することにより,血圧の恒常性を維持する代償機構(圧反射系)が備わっている。これらの代償機構はセンサーとして働く特殊な細胞(圧受容器)により活性化され,圧受容器が血圧の変化を検出すると,代償機構の変化が誘発される(出血により血圧が低下した場合には,代償機構を活性化させ,心拍数が増えて心拍出量が増加し,静脈が収縮して保持する血液量を減少させ,細動脈が収縮して血流への抵抗を強める。出血が止まれば,体の他の部位から体液が血管内に移動するため,血液量も血圧も回復し始め,腎臓において尿の生成量を減らし,体内に水分を貯め,血液量が完全に回復する。)。(甲B37,B40,B41)    ウ しかし,代償機構には限界があり,急速に大量の血液が失われる場合,代償機構は急には十分に働くことができず,血圧が低下する。      10~20%の出血量であれば血圧の変動は少なく,15~25%の出血量であれば,ショックの程度は軽症で,軽度の頻脈・血圧下降の症状が生じる。25~35%の出血量であれば,ショックの程度が中症で,収縮期血圧が90~100mmHg,頻脈(1分間に100~120回)となる。30%を上回る出血では,血圧を維持することができなくなり,この場合の低血圧は高度なショック状態を意味する。(甲B36,B39)    エ 代償機構(圧反射系)において,圧受容器から中枢神経系,遠心性交感神経までの情報の伝達は高速に行われるが,交感神経末端までの応答は比較的緩やかであり,末梢血管抵抗及び心拍数の変化が生ずるまでに時間を要する(甲B40)。   (4) 起立性低血圧     臥位又は座位から起立時3分以内に収縮期血圧で20mmHg,拡張期血圧で10mmHg以上低下する場合をいう。脳血流の低下に基づく症状(立ちくらみ,めまい及び失神),腎臓関連症状(乏尿)等が見られる(甲B41,乙B13)。  3 争点1について   (1) 本件診察時に,亡Aは,腹部大動脈瘤が既に破裂し,又は切迫破裂の状態にあったか否か    ア 上記1の事実によれば,① 亡Aには,11月7日午前の時点において,最大径55mmもの大きさの腹部大動脈瘤が存在していたこと(上記1(5)ウ),② 亡Aが11月7日朝に訴えた腰背部痛は,突然発症した急性で,体動時でなくても痛みのある安静時痛であり,被控訴人病院の救急部を受診することを要すると感じられる程度に痛みの強いものであったこと(上記1(2)ア),③ 亡Aは,11月7日朝の収縮期血圧が低下し(上記1(1)エ,(2)イ),④ 若干の嘔吐をしていたこと(上記1(2)イ),⑤ 亡Aの直接の死因は腹部大動脈瘤破裂(クローズド・ラプチャー)であったこと(上記1(5)ウ)の各事実が認められる。      そして,上記2の医学的知見によれば,上記①の動脈瘤は大きくて破裂しやすい状態であったこと(上記2(2)ア(ア)),上記②の腰背部痛はその発症様式及び性状からすると内臓に由来するものである可能性が相当に高いこと(上記2(1)イ),上記③の低血圧は出血が生じたことを原因とするものであること(上記2(3)ア),上記④の嘔吐は腹部大動脈瘤の破裂の症例において観察されることがあること(上記2(2)ウ),そして,上記⑤のとおり亡Aの死因が腹部大動脈瘤破裂(クローズド・ラプチャー)であったことからすると,亡Aにおいて,腰背部痛を訴えた時点から被控訴人病院に到着した時点までのいずれかの時点において,上記①の腹部大動脈瘤が破裂したと認めるのが合理的である。    イ 被控訴人の主張について      被控訴人は,腹部大動脈瘤が破裂又は切迫破裂の状態であったことを争い,次のとおり主張するが,いずれも採用することができない。     (ア) 被控訴人は,亡Aの主訴は腰背部痛ではなく,かつ,亡Aに苦悶様の表情が見られなかったことなどから,激痛がないと判断された旨を主張する。       確かに,亡Aは,被控訴人病院の救急部では,右手が震えることや元々左手にしびれがあることを訴えていた(上記1(3)イ)。そして,亡Aは,脳梗塞の既往歴があり(上記1(1)ア,ウ,エ),自宅近くに△△病院があるにもかかわらずわざわざかかり付けの被控訴人病院を受診したこと(上記1(2)ア)からも推察されるように,脳梗塞の再発を心配しており,被控訴人病院においても,この旨を申告していた(上記1(3)カ(ア))。       しかし,亡Aは,歯医者に行った控訴人X1をわざわざ電話で呼び戻し,普段は控訴人X1が運転する自家用車で通院しているのに対して,11月7日午前には,タクシーで被控訴人病院の救急部を受診したのであり(上記1(2)ア),救急部に到着後も床に座り込むような状態であったのであるから(上記1(3)ア),この間,亡Aに強度の痛みがあったと認められる。そして,B医師も,腰痛の原因となる疾患の鑑別診断を行う方法により本件診察を行っていたのであるから(上記1(4)イ),亡Aの主訴は,当日の朝に突然発症した腰背部痛であったと認めることができる。なお,被控訴人は,B医師のカルテの記載(上記1(4)イ(イ)a)につき,亡Aの訴えの強い順又はB医師が重要であると考えた順であると主張するが,その記載は時系列順となっているし,B医師が行った本件診察の上記方法にも整合しないから,上記主張を採用することはできない。また,亡Aの痛みの程度についても,患者により痛みの訴え方は異なるから,その表情等の外面のみにより痛みの程度を断定することは相当でない上,被控訴人の救急部を急ぎ受診したとの上記経緯に照らすと,苦悶様の表情がなかったことをもって,亡Aに激しい痛みがなかったと認めることはできない。そして,控訴人X1は,神経内科問診票に(+)と記載したが(上記1(4)ア(イ)),同人が腰痛の程度を表す趣旨でこのとおり記載したものとは認められないから,上記記載をもって腰痛の程度が重いものでなかったとみることもできない。     (イ) 被控訴人は,亡Aの血圧低下につき,起立性低血圧の影響であるとの説明が可能である旨のほか,① 血圧低下は,亡Aの体重からすると約1500mlの出血があった場合に生じ,ショックに至ることになるところ,亡Aの被控訴人病院におけるバイタルサイン(血圧,脈拍)は,ショックがあったとした場合の経過と矛盾するから,破裂が生じていたとはいえない,② タンポナーデ効果が生じた根拠はないなどと主張する。       確かに,亡A及び控訴人X1は,C看護師に対し,起立性低血圧がある旨を説明していたが(上記1(3)カ(ア)),亡Aが使用していた血圧計は座って測るタイプのものであり(上記1(1)エ),血圧は座って測るのが一般の測定方法(これに対し,起立性低血圧は立位により測定する〔弁論の全趣旨〕。)であることを併せ考慮すると,11月7日朝の亡Aの血圧につき,起立性低血圧の影響があったとはにわかに考え難い。       また,血圧低下と出血量につき,確かに,「収縮期血圧の低下は,循環血液量喪失が30%以上に達する大量出血の際に初めて認められる徴候であることを知っておく必要がある。」との記載のある文献(乙B9)が存在する。しかし,出血量と臨床症状につき,上記2(3)ウのとおり,15~25%の出血量の場合に軽症のショック,軽度の血圧下降がみられる旨の文献も存在する。そして,文献(乙B9)は,救急医療の現場において,ショックの判断を血圧のみに頼ってはならず,より少ない出血の際に存在する徴候を見逃してはならないことを警告する文脈において上記記載がされているのであり,30%以上の大量出血でなければ収縮期血圧が一切低下しないことを科学的に論証した記載であるとは認められない。よって,文献(乙B9)の上記記載は,亡Aの血圧低下が大動脈瘤破裂による出血を原因とするとの認定を妨げるものではない。       そして,亡Aの血圧の低下及び上昇は,① 腹部大動脈瘤が破裂した場合でも後腹膜腔へ破裂したとき(クローズド・ラプチャー)には,血腫によるタンポナーデ効果により心停止を免れ,又は血圧が維持されショックから離脱できる場合があること(上記2(2)ア(イ)b),② 出血が生じた場合でも,ある限度の出血に止まるのであれば,代償機構が作用することにより,血圧の回復が実現されること(上記2(3)イ)からすると,クローズド・ラプチャーであった亡Aの腹部大動脈瘤の破裂の場合も血圧が回復したと説明することが十分に可能であり(脈拍も,血圧のみが回復し,脈拍が回復しないとは考え難いから,血圧と同様に回復すると考えられる〔甲B22,証人I〕。),血圧の経過についても,これにより腹部大動脈瘤が破裂していたとの認定を左右することにはならない(上記2(2)ウの症例においても,腹部大動脈瘤が後腹膜腔に破裂後に血圧が維持されているものがある。)。なお,被控訴人は,代償機構として細胞内液の血管内移動が生じたとすれば,乏尿や顔面蒼白となるとも主張するが,亡Aの排尿量及び顔面状態を認めるに足りる。的確な証拠はないから(救急部問診票及びカルテにも記載がされていない。),上記主張は前提を欠いている。       このほか,被控訴人は,腹部大動脈瘤の破裂時の痛みは神経性疼痛が主体であり腹部症状が強く出現し,腹膜刺激症状が必発であるなどとも主張するがこれを認めるに足りる証拠はない(意見書〔乙B6〕にはこれに沿う記載があるが,文献の裏付けを欠いており,直ちに採用することができない。)。また,被控訴人は,後腹膜腔に破裂した場合には短時間で再出血を来し,特に亡Aはプラビックスを服用していたから,不安定な止血状態が7日夜まで続いていたとは考えられないなどとも主張するが,プラビックスの影響の有無及びその程度を認めるに足りる証拠はない。そして,上記止血状態が継続する時間についての医学的知見は見当たらないところ,上記2(2)ア(イ)b,ウの症例の中に,腰痛,嘔吐を発症してから1日近くが経過したとの報告もあることからすると,上記止血状態が継続していたとの認定は覆されない。     (ウ) 被控訴人は,嘔吐は腹部大動脈瘤の典型的な症状ではない旨を主張する。       確かに,提出された文献において,腹部大動脈瘤破裂の主徴として,急激な強い腰痛,重篤感,ショック,異常高血圧及び四肢の血圧較差(甲B1),腹部の拍動性腫瘤,腹痛・腰痛及び血圧低下(甲B4)が挙げられており,これらには嘔吐の記載はされていない。しかし,腰背部痛と組み合わせた場合に腹部大動脈瘤破裂を想定すべきであるとの記事が存在し,複数の症例報告において,嘔吐が随伴症状として記載されていることなどの上記2(2)ウの医学的知見からすると,典型的といえるかどうかはさておき,腹部大動脈瘤破裂において,嘔吐が生じ得る症状であるということは十分に可能である。なお,「嘔吐,腹痛などの腸閉塞症状により腹部大動脈瘤が発見される症例は非常に希である」とする症例報告(乙B1)がある(なお,同文献の本文中には「術前嘔吐,腹痛などの腸閉塞状況により腹部大動脈瘤が発症する症例は非常に希である。」との記載があるが,ここでいう「発症」の意味は不明であり,文意は理解し難い。)。しかし,この症例報告は,腸閉塞状況があった場合に腹部大動脈瘤を発見した例があることを挙げ,① 腹部大動脈瘤がある高齢者が腸閉塞症状を呈した際には本症例のように動脈瘤による閉塞機序を考慮することが望ましい,② 消化器症状による診察において腹部触診はもちろん重要であるが,鑑別疾患として施行する腹部CTの有用性が非常に高いこと,を結語としているものであるから,上記認定のとおり複数の症例報告等が存在する中で,この症例報告は上記認定判断を左右するものではない。       また,被控訴人は,血腫の圧迫が除去されない限り,嘔吐が継続し,軽快しないとも主張するが,上記1(5)アのとおり,亡Aは,帰宅後も嘔吐が継続していたと認められる。       よって,亡Aに嘔吐があったことは,腹部大動脈瘤破裂を肯定する要素として把握すべきである(なお,典型的な症状でないとの上記主張は,後記(2)の過失の点において,改めて検討する。)。     (エ) 被控訴人は,変形性脊椎症の可能性も指摘するが,亡Aの痛みが安静時痛であったこと及び上記2(1)イの医学的知見に照らし,採用することができない。   (2) 本件診察時につき,B医師に過失があったか    ア 上記1の事実及び上記(1)アの認定によると,亡Aの腰背部痛につき,急性の安静時痛であり,その程度としても被控訴人病院の救急部を受診することを要すると感じられる程度に痛みの強いものであったこと,血圧低下及び嘔吐の症状が随伴していたと認められる。そして,上記2(1),(2)イの医学的知見によると,B医師は,亡Aの腰背部痛につき,整形外科由来の疾患ではなく内臓由来の疾患であるとの疑いをもつことが可能であり,CTを実施することにより腹部大動脈瘤の破裂の診断をすることができたということができる。      そして,上記医学的知見によると,腰痛の診断として,緊急性の高い疾患,内臓由来の疾患を除外診断により優先的に鑑別すべきであるとされ,腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂は,その中でも緊急性のかなり高い疾患の一例に挙げられていることが認められる。      そうすると,B医師は,本件診察において,腰痛を来す疾患として,緊急性の高い疾患と筋骨格系に由来する疾患とを鑑別するにつき,その発症様式,性状,程度及び随伴症状を問診し,急性の安静時痛があるとの症状及び血圧低下等の随伴症状を聴取した上で,緊急性の高い腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂を疑い,CTを実施すべき義務があったというべきである。    イ しかし,B医師は,上記1(4)イのとおり,本件診察において,神経内科問診表を前提にして,車椅子に座ったままの亡Aの様子を見ながら問診を進め,聴取した内容を踏まえて,尿路系疾患及び消化器系疾患を除外するための打診,触診及び聴診をしたが,亡Aが訴えていた腰背部痛の性状につき安静時痛であるか否かについては聴取しておらず,発症様式についても特に掘り下げての聴取,検討をしていない。また,気分不良の具体的内容についての聴取も行わなかったのであり,これらによると,鑑別診断の対象とすべき必要性の高い腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂の可能性を想定した具体的な検討がされていなかったものと認められる(証人Bは,バイタルサインを見て,瞬時に腹部大動脈瘤破裂の可能性を否定する判断をすることができるようにトレーニングを積んでいる旨を供述する。しかし,上記2において引用した文献のいずれにも,バイタルサインから上記可能性を判断することができるとの記載はなく,かえって,腹部大動脈瘤破裂は誤診する例が多く,注意すべきである旨の記載があるもの〔甲B20〕があることが認められる。)。そして,亡Aから,腰背部痛が急性発症の安静時痛であり,血圧が低下していたことなどを聴取することができたとするならば,腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂を疑うことができ,CTを実施することにより,腹部大動脈瘤の破裂を発見することができたと認めることができる。      以上によれば,B医師による本件診察につき過失があったというべきである。    ウ これに対し,被控訴人は,上記第2の4(2)イのとおり主張する。      しかし,被控訴人病院の救急部において緊急性が低いと判断された患者であることがB医師の注意義務を軽減する事情にならないことはもとより,亡Aの主訴が腰背部痛であり,上記説示のとおりB医師においてもこれを前提として尿路系疾患,消化器系疾患の各除外診断を行っていたから同医師も亡Aの主訴が腰背部痛であることを認識していたことは明らかである。      この点につき,確かに,亡A及び控訴人X1は,脳梗塞の再発を心配しており,この旨をB医師に述べていたこともうかがわれるが,上記心配は腰背部痛の原因とは無関係であり,腰痛の原因についての正確な知識がない患者の訴えに囚われるのではなく,あくまで症状に即して問診をすべきであったというべきであるから(甲B29,B30),上記心配について述べられたことは,過失があったとの上記判断を左右しない。      また,嘔吐が腹部大動脈瘤破裂の典型的な症状ではないとして,嘔吐については仮に鑑別の前提資料としないとしても,腹部大動脈瘤破裂の三主徴が全て揃うのは3分の1から半数程度であり腰痛のみの症状が現れることもあるところ(上記2(2)ア(イ)a,イ(イ)),上記説示のとおり,問診により,亡Aの腰背部痛が急性発症の安静時痛であり,被控訴人病院の救急部を受診することを要する程度のものであって,さらに血圧が低下していたとの認識に至ることは可能であり,腹部大動脈瘤の破裂を鑑別する必要性の高さを併せ考慮すると,やはりB医師において,腹部大動脈瘤の破裂又は切迫破裂を疑い,CTを実施するべきであったということができる。      よって,被控訴人の上記主張は採用することができない。  4 争点2について    上記1の事実,上記2の医学的知見及び上記3の認定説示のほか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によると,① 亡Aは11月7日午前11時頃から本件診察を受けていたが,その頃には既に腹部大動脈瘤破裂が生じていたこと(上記3(1)),② しかし,破裂様式がクローズド・ラプチャーであり(上記3(1)),バイタルサインは正常であったこと(上記1(3)ウ),③ 自宅に戻った亡Aに再び出血が生じたのは午後11時以降であったこと(上記1(5)イ),④ 被控訴人病院は,救命救急センターを設置し,第三次救急病院としての役割を担っているのみならず(甲A1),腹部大動脈瘤破裂について腹部ステントグラフト内挿術を積極的に導入するなど診療態勢を整えていること(甲B16)からすると,本件診察において,腹部大動脈瘤の破裂との診断がされていたら,緊急に手術を実施することにより,救命することができた蓋然性が高いと認められる。    よって,B医師の本件診察における過失と亡Aの死亡との間の因果関係を認めることができる。  5 争点3について   (1) 亡Aの損害    ア 死亡による逸失利益 840万9664円      基礎収入を202万5449円とすること,69歳の平均余命年数の中間利息をライプニッツ方式(同係数10.380)で控除する逸失利益の計算方法については当事者間に争いがない。      そして,亡Aが死亡当時控訴人X1と2人暮らしで年金を生活費の原資としていたこと(甲A3,A5,弁論の全趣旨)からすると,生活費控除は60%とするのが相当である。      よって,202万5449円×(1-0.6)×10.380により,840万9664円となる(1円未満を切り捨てる。)。    イ 死亡慰謝料 1800万円      亡A及び控訴人X1は,脳梗塞の再発を心配して被控訴人病院を受診し(上記1(2)ア),C看護師に対してもその旨を伝えていること(上記1(3)カ(ア),キ)から推認されるように,B医師の問診に対しても同様の態様を取っていたことがうかがえ,このことがB医師の誤診に影響を与えたことは否定できないこと等の本件の経緯に顕れた一切の事情を考慮すると,亡Aの死亡に対する慰謝料は,1800万円と認めるのが相当である。    ウ 葬祭関係費 150万円      亡Aの葬儀に要した費用175万1880円(甲C4)のうち,150万円をもって相当因果関係のある損害と認める。    エ 小計 2790万9664円    オ 相続      亡Aの死亡により,控訴人X1は2分の1の割合(1395万4832円)で,控訴人X2及び同X3は各4分の1の割合(各697万7416円)で,上記エの損害賠償請求権をそれぞれ相続した。   (2) 控訴人ら固有の慰謝料     亡Aの死亡により,亡Aの配偶者である控訴人X1,子である控訴人X2及び同X3も精神的苦痛を受けたと認められ,慰謝料額は,証拠(甲A3,A5,控訴人X1本人,同X3本人)のほか上記亡Aの慰謝料に関する判断でも触れたことを含む本件に顕れた一切の事情を考慮して,控訴人X1につき100万円,控訴人X2及び同X3につき各50万円を認めるのが相当である。   (3) 弁護士費用     控訴人X1につき150万円,控訴人X2及び同X3につき各75万円を認めるのが相当である。   (4) 合計     控訴人X1につき1645万4832円,控訴人X2及び同X3につき各822万7416円となる。 第4 結論    よって,控訴人らの請求は,不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求として,控訴人X1につき1645万4832円及びこれに対する平成23年11月7日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,控訴人X2及び同X3につき各822万7416円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払を求める限度で,それぞれ理由があり(債務不履行責任に基づく請求は,これにより上記金額を超える損害額を認容するに至らないから,その判断を要しない。),当裁判所の上記判断と異なり控訴人らの請求を全部棄却した原判決は一部相当でないから,これを上記の趣旨に変更することとして,主文のとおり判決する。     広島高等裁判所第2部 

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