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腹痛により救急車で搬送された患者,CT撮影を行うべき義務を怠った過失により穿孔性腹膜炎により死亡した事例

腹痛により救急車で搬送された患者が,医師らの腹部CT撮影を行うべき義務を怠った過失により,二日後に消化管穿孔による穿孔性腹膜炎により死亡した事例

名古屋地裁 平成23年1月14日判決
事件番号 平成21年(ワ)第5667号

本件は,腹痛によって被告病院の救急外来に救急車で搬送された患者が,二日後に消化管穿孔による穿孔性腹膜炎により死亡したことについて,患者の相続人である原告らが,被告病院医師には消化管穿孔及び穿孔性腹膜炎の可能性を考えて腹部CT撮影ないし左側臥位での腹部X線撮影を行うべき義務を怠った過失があると主張して,被告に対し,診療契約の債務不履行又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,当初の救急外来診察で行った診察や検査結果のみでは,腹部に関する何らかの急性,重大な病気に罹患していた可能性を排除できていないので,被告病院医師には,当初の外来診察が終了するまでの間に急性腹症の診断に有用である腹部CT検査をすべき注意義務があったとし,これを懈怠した過失があるとした。
また,被告病院医師が,当初の外来診察が終了するまでの間に腹部CT検査を行えば,腹腔内に遊離ガスがあることが判明し,患者が消化管穿孔である旨の診断を行うことができた可能性が高く,かつ,当該時点では患者が消化管穿孔を発症してからそれほど時間が経過していなかったことも併せて考えると,当該時点で緊急手術が行われれば患者を救命できた可能性が高いというべきである。よって,被告病院医師に前記注意義務違反がなければ,患者が現実に死亡した時点においてなお生存していた高度の蓋然性を認めるのが相当であるとして,原告らの請求を一部認容した。



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