喉頭癌が疑れたにもかかわらず,生検・治療を実施されず患者は喉頭の全摘出,後遺障害を負った事例
喉頭癌を疑い,速やかに生検・治療を実施すべきであったのにこれらを怠り,患者は喉頭の全摘出をするに至り,後遺障害を負った事例
東京地裁 平成23年3月23日判決
事件番号 平成21年(ワ)第16896号
本件は,患者の右仮声帯の腫脹と嗄声の持続を確認した後は,速やかに生検を実施し,喉頭癌の確定診断をした上で,速やかに放射線治療を開始すべき義務があったにもかかわらず,これを怠った注意義務違反があり,これにより,患者は,喉頭の全摘出をするに至り,喉頭全摘による発声機能喪失の後遺障害を負ったとして,病院に対し,不法行為(使用者責任)又は診療契約上の債務不履行に基づき,損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,担当医らには,患者の右仮声帯の腫脹と嗄声の持続を確認した後は,速やかに局所麻酔下生検あるいは全身麻酔下生検を実施し,喉頭癌の確定診断をした上で,速やかに放射線治療を開始すべき義務を怠った注意義務違反があるとした。
また,上記注意義務違反により,患者は,適切にその病状及び生検に関する情報を提供され,これに基づいて生検を受けるか否かを真摯に選択・判断する権利(いわゆる自己決定権)を侵害されたというべきであり,前記注意義務違反と患者の自己決定権侵害との間には因果関係があるとし,慰謝料を認めるのが相当であるとして,患者側の請求を一部認容した。