腎移植歴を有する患者が,痺れの症状改善のため他家幹細胞治療を受けた事例
腎移植歴を有する患者が,痺れの症状改善のため他家幹細胞治療を受けた事例
東京地裁 平成27年5月15日判決 事件番号 平成25年(ワ)第29483号
本件は,慢性腎不全の既往症を有し,腎移植に伴う拒絶反応を防止するため免疫抑制療法を受けるなどしている患者が,痺れの症状改善のため,被告診療所において幹細胞治療(脂肪細胞由来の体性幹細胞を使用する再生医療)を受けたが,痺れの症状は改善せず,むしろ悪化するなどしたとして,被告医師の説明義務違反を主張して,被告らに対し,不法行為(被告ら)及び債務不履行(被告医師)に基づき損害賠償を求めた事案である。 裁判所は,被告医師は,腎移植歴を有する患者に対して他家幹細胞治療(第三者から採取した体性幹細胞を培養して投与すること)を実施した経験はなく,この点につき特段知見を有していたわけでもないこと,患者が医療水準として未確立である本件治療を受けるか否か熟慮し得るように,本件治療に付随する危険性,これを受けた場合と受けない場合の利害得失等について分かりやすく説明したとは到底いえず,説明義務が尽くされたとはいえないとして説明義務違反を認め,患者の請求を損害相当額認容した。