看護師による点滴ルート確保のための留置針の穿刺を受け,複合性局所疼痛症候群(CRPS)を発症し,後遺障害を負った事例
看護師による点滴ルート確保のための留置針の穿刺を受け,複合性局所疼痛症候群(CRPS)を発症し,後遺障害を負った事例
静岡地裁 平成28年3月24日判決 事件番号 平成25年(ワ)第497号
本件は,被告病院において,甲状腺右葉半切除手術を受ける準備として,左前腕に点滴ルート確保のために左腕に末梢静脈留置針の穿刺を受けた患者が,被告病院の看護師に十分な注意を払わずに穿刺行為を行うなどの過失があったと主張し,その結果,複合性局所疼痛症候群(CRPS)を発症し,後遺障害を負ったとして,不法行為又は債務不履行に基づき,損害賠償を求めた事案である。 裁判所は,本件の争点①被告の過失の有無について,本件穿刺行為によって患者の橈骨神経浅枝が傷害されたと認め,看護師には、本件穿刺行為において、深く穿刺しないようにする義務を怠った過失があるとし,争点②患者の後遺障害の有無及び程度について,患者は,本件穿刺行為によってCRPSに罹患したものと認め,後遺障害等級5級6号に該当するとし,争点③損害額について,被告の過失と相当因果関係のある財産的損害及び慰謝料相当額を認めた。 なお,争点④素因減額の可否については,患者の後遺障害に,患者の心因的要因が影響したと認めることはできないから,本件においては素因減額をすべきとはいえないとした。