耳管通気処置を受けた際に心肺停止,その後死亡したのは救命措置を行わなかった過失があったとして損害賠償を求めた事例
耳管通気処置を受けた際に心肺停止となり,その後死亡したのは,適切な救命措置を行わなかった過失があったとして損害賠償を求めた事例
仙台地裁 平成28年12月26日判決 事件番号 平成25年(ワ)第1219号
本件は,被告クリニックにおいて耳管通気処置(金属のカテーテルを経鼻的に耳管咽頭口部に導入して空気を中耳腔に送り込む処置。)を受けた際に心肺停止となり,その後死亡したのは,同クリニックの医療従事者に適切な救命措置を行わなかった過失があったとして,患者(当時11歳)の相続人である原告(父)が,不法行為または診療契約の債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,被告クリニック医療従事者には,①人工呼吸を行わなかった過失,②バッグバルブマスク換気を行わなかった過失,③救急隊に引き継ぐまで心肺蘇生を継続すべきであるのにこれを中断した過失があったとし,この各過失により蘇生措置が不十分なものにとどまったことで重篤な低酸素脳症となり脳浮腫が進行し,頭蓋内圧が亢進して脳死状態となり死亡に至ったことが認められ,被告の各過失と患者の死亡との間に因果関係が認められるとして,慰謝料及び逸失利益等の損害賠償相当額を認めた。