急性心筋梗塞であると診断,かつ適切な治療を施すなどの義務を怠ったことにより死亡させたことについて,損害賠償を求めた事例
患者(当時40歳)を急性心筋梗塞であると診断し,かつ適切な治療を施すなどの義務を怠ったことにより死亡させたことについて,損害賠償を求めた事例
鹿児島地裁 平成26年10月29日判決
事件番号 平成23年(ワ)第854号
本件は,被告病院医師らが,患者(当時40歳)を急性心筋梗塞(AMI)であると診断し,かつ適切な治療を施すなどの義務を怠ったことにより死亡させたことについて,死亡した患者の唯一の相続人である原告(患者死亡当時13歳)が,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
裁判所は,被告病院医師が,当初入院中の血液検査及び心電図検査結果が判明した時点で患者が急性心筋梗塞であると確定診断し,患者を退院させることなく再灌流療法を含めた急性心筋梗塞を前提とする適切な治療が行われていた場合,2回目の発作を起こすことなく救命され得たであろう高度の蓋然性が認められ,さらに,再度入院時における治療をみても,被告病院医師は,急性心筋梗塞を発症したという確定診断をし,かつ適切な検査及び治療を施す義務を怠り3回目の発作が発生したというべきである。したがって,被告病院医師らによるこれらの注意義務違反がなければ,冠攣縮関与による急性心筋梗塞から心原性ショックによる死亡という結果を回避することができた蓋然性は非常に高く,被告病院医師の前記注意義務違反と患者の死という結果には明らかな相当因果関係が認められるというべきであるとした。 また,被告病院における過失の態様,死亡した患者は働きながら未成年者である原告を一人で扶養してきた母親であり,被告病院における過失により未成年の子である原告との死別を余儀なくされたこと,原告が働きながら原告を扶養してきた母親を突然失ったことなど,本件における一切の事情を総合考慮し,相当額の慰謝料及び逸失利益等の損害7000万円余の支払いを認めた。